SDF and SXDF survey for Lyman Alpha Emitters at z=7.3

【日時】9月1日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】澁谷 隆俊(総研大 D1・三鷹、指導教員 : 家正則)
【タイトル】SDF and SXDF survey for Lyman Alpha Emitters at z=7.3
宇宙は高温・高密度状態で開闢したとされているが、宇宙膨張と共に温度・密度は下がり宇宙空間における原子核・電子が結合した中性期に入る。
やがて天体の形成が始まるが、形成直後の銀河は大きなエネルギーを放射するため、結合した原子を再び電離していく。これを「宇宙再電離」と呼ぶが、その終焉時期は、赤方偏移6~11と未だ正確には分かっていない。
この形成時期に観測的制限を与えるためには、再電離終焉時期である赤方偏移7前後のライマンアルファ輝線銀河(LAE)の光度関数を調べ、その時代の中性水素残存量を推定することが有効である。
分光赤方偏移同定が可能なほど明るい高赤方偏移銀河は個数密度が低く、それを検出するには広視野観測が必要となる。
すばる望遠鏡では主焦点にある広視野カメラ(Suprime-Cam)を活かして赤方偏移3から7にかけて、LAEのLya光度関数の進化を詳細に調べてきた。
我々はさらに遠方のLAE探査のために、2009年の春と秋に中心波長1006nmの狭帯域フィルター(NB1006) を装着したSuprime-Camを用いて、すばる深宇宙探査領域(SDF) とすばるXMM-Newton深宇宙探査領域(SXDF) において赤方偏移7.3のLAE探査を行った。
その結果、4つのz=7.3 LAE候補天体を検出することができた。
今回の発表では、今年の春に上記候補天体の半分を分光観測したのでその現状を述べる。

AKARI赤外線観測による星形成領域のYSO分類

【日時】7月7日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】佐藤 八重子(総研大 D2・三鷹、指導教員 : 田村 元秀)
【タイトル】AKARI赤外線観測による星形成領域のYSO分類
2006年に打ち上げられたAKARI衛星では、多数の星形成領域の観測を行なってきた。我々は、赤外線カメラIRCを用いて、約200視野の星形成領域の観測を行ない、その解析を進めている。これらの中から、星形成過程における個々の星周構造を研究していくために、星のクラスターがあり、重い星を含まない領域について、統計的な議論を行なって行く予定である。O型星のような重い星を含まない中質量星形成領域では、原始星の進化は比較的遅いため、また大質量星による影響がないため、星周構造が残りやすいと考えられる。
今回は、これまで解析を進めてきた星形勢領域GGD12-15とSerpens領域に対して結果をまとめたので、報告する。GGD12-15領域は約1kpcにあるクラスターを伴う星形成領域で、HⅡ領域や水メーザー、COアウトフロー、多数の近赤外線源や電波源といった活発な星形成活動を示す天体が多く確認されている。Serpensは260pcという近距離にある低質量星形成領域として知られる有名な星形成サイトで、class0/I天体を含むような若いクラスターが存在しており、多くの研究がなされてきた。
約10分角の広視野を持つAKARI/IRCにより、どちらの領域においても、近赤外線(3,4μm)では350天体以上、中間赤外線(7,11μm)でも100天体以上を検出した。3,4,7μmのデータによる2色図や、GGD12-15領域とSerpens領域を比較したところ、中心のクラスター天体と視野外縁に位置する天体のばらつきの特徴が良く似ていた。中心のクラスター天体は赤化や赤外超過を大きく受けているのに対して、外縁部の天体は赤化をほとんど受けていなかった。またGGD12-15領域では、南アフリカIRSF/SIRPOLによる近赤外線偏光観測から、JHKsで約300天体が検出されている(中間レポート報告内容)。JHKsによる2色図では、赤外超過を持つ天体は約15%程度であったが、これは中間赤外線を含めた2色図から得られる割合より小さい。さらに3,4,7μmの2色図による赤外超過を持つ天体のうち、H,Ksでも検出された天体についてSEDを作成したところ、ほぼ全てがclassⅠ天体であり、これらは中心クラスター付近に位置していることも確認された。
今回は、GGD12-15領域の2色図などを用いて進化段階を分類し、それらの天体の空間分布について解析を行なった結果を踏まえて、近赤外線(IRSF)と中間赤外線(AKARI)によるYSOの分類法を提案していく。また、比較対象として、Serpens領域のIRSF/SIRPOLの結果(Sugitani et al. 2010)も含めて議論を行なっていく。

JVNによるUC HII領域W3(OH)に付随する6.7GHz帯メタノールメーザー源観測

【日時】6月30日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】松本 尚子(総研大 D3・三鷹、指導教員 : 本間 希樹)
【タイトル】JVNによるUC HII領域W3(OH)に付随する6.7GHz帯メタノールメーザー源観測
銀河系棒状構造を探るための試験観測として、VERAによる位置天体観測のための新しいツールである6.7GHz帯メタノールメーザー源の観測を行ってきた。
対象天体は大質量星形成領域かつUltra Compact HII領域のW3(OH)である。
今回のコロキウムでは、VERA局を含む大学連携 VLBIネットワーク(JVN)を用いて測定したこのW3(OH)までの年周視差およびLSRに対する絶対固有運動の結果と、W3(OH)領域内の6.7GHz帯メタノールメーザー源の内部固有運動の結果を報告する。
今回得られた距離測定精度はアメリカの電波干渉計 VLBAによる12GHz帯メタノールメーザー源観測と誤差の範囲で一致する結果が得られ、本結果はRygl et al. (2010)に続く2例目の6.7GHz帯メタノールメーザー源の年周視差計測結果となる。
また、6.7GHz帯メタノールメーザー源の内部固有運動を初めて計測した。
W3(OH)に関して、6.7GHz帯メタノールメーザー源はOHメーザー源と比較的良く似た領域に分布すること、12GHz帯メタノールメーザー源と視線速度や相対位置が酷似していることが報告されている(Menten et al. 1992)が、視線速度・相対位置に加え、天球面上の運動についても比較可能になった。

様々な彗星からもたらされる流星雨の可能性

【日時】6月23日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】堀井 俊(総研大 D3・三鷹、指導教員 : 渡部 潤一)
【タイトル】様々な彗星からもたらされる流星雨の可能性
流星群は、地球が彗星から放出された濃いダストのトレイルを横切るときに出現する。彗星から放出されたダストは、その放出されたときの軌道要素をもとに宇宙空間を運動し、惑星などによる様々な摂動を受けながら母彗星の動きとは独立した軌道進化をたどる。それにより、母彗星の動きではなく、それぞれのダストの道筋によって流星群の出現の可能性のありなしがかかってくることになる。
これがダスト・トレイル理論である。このダスト・トレイル理論は本格的に使われるようになってから月日は浅いが、より正確で精度のよい流星群の出現予測ができるようになってきている。
今回の発表では、これまでにこのダスト・トレイル理論を用いて調べてきたいくつかの彗星からもたらされる流星雨の可能性について紹介する。
また、今年の秋にハートレー第2彗星(103P/Hartley)が地球に接近することが今注目されている。地球に最も接近するのは10月20日頃で、その距離は約0.12AUであり、等級にして約4等まで明るくなるとされている。さらに、この彗星の軌道は地球の軌道に沿うように並行しており、公転速度に大きな差もないため、10月から11月にかけて、両者が接近した状態が長く続くことが大きな特徴になっている。この彗星と地球が長い期間に渡って接近することに伴い、流星群の出現も期待される。その出現の可能性についても計算の途中経過を発表する。

M型矮星に対する低周波電波観測の結果について

【日時】6月16日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】小池 一隆(総研大 D3・野辺山、指導教員 : 出口 修至)
【タイトル】M型矮星に対する低周波電波観測の結果について
M型矮星は、恒星の中でも特に表面温度の低い星(<3900 K)です。 このような低温矮星に関する詳しい研究は、始められてまだ10年ほどしか経っておらず、電波での研究は、近年ようやく観測が行われるようになり、議論されはじめたところです。 低温矮星からの電波は、これまでに十数個程のM、L型星に対して4.8GHzや8.4GHzで検出されています。 これら電波の放射機構としては、当初、その周波数や激しい強度変動からgyrosynchrotron 放射であると考えられてきましたが、その後、100%に近い円偏光度を持った電波放射が観測されると、新たに electron-cyclotron maser 放射という放射機構が提案され、さらに今日では、そういった変動の見られない定常的な電波放射も観測されるなど、複数の放射機構が存在すると考えられています。 そこで私たちは、他の低温矮星についても電波観測を行い、いずれの放射機構が多数を占めるのか、また新たな特徴を持った電波放射は見られないか、調査することにしました。 本発表では、昨年の6月にインドのGiant Metrewave Radio Telescope (GMRT)を用いて行ったM型矮星の電波観測結果について報告します。 この観測では、近くにM型矮星が見られる電波源(FIRST天体、1400MHz)8天体について、3つの低周波数(1400、610、240MHz)で観測を行いました。