SIRPOLによる広視野赤外線偏光観測:大質量星形成領域NGC6334における磁場構造

【日時】4月22日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・ハワイ観測所
【タイトル】SIRPOLによる広視野赤外線偏光観測:大質量星形成領域NGC6334における磁場構造
【発表者(敬称略)】橋本 淳(総研大D3 ・三鷹、指導教員 田村 元秀)
星形成過程における磁場の役割としては, 一般的には、分子雲の自己重力収縮の支持(e.g., Shu et al. 1987),角運動量の輸送(e.g., Shu et al. 2000)などが知られており,オリオン大星雲においても, 分子雲の収縮により磁場が砂時計型に曲げられることが観測的に確かめられている(Schleuning 1998;Kusakabe et al.2008).
しかし, これまで行われてきた可視光・近赤外線や遠赤外線・サブミリ波波長での磁場構造の観測は効率が悪く,磁場が星形成に与える影響についての観測的研究は遅れている.
そこで我々は、磁場と星形成の関係を調べるために,南アフリカにあるIRSF 望遠鏡に近赤外線偏光観測装置SIRPOL を取り付け,銀河面付近(b=0.7 度)にある比較的近傍(1.7kpc) の大質量星形成領域NGC6334の詳細な磁場構造の観測を行ってきた. この領域には少なくとも7 つの大質量星形成サイトが様々な進化段階にあると考えられており,大局的な環境が同じであることから、系統的に大質量星形成と磁場の関係を明らかにすることが可能になると考えられる.一般的に回転している非対称な星間ダストは局所的な磁場によって磁場と垂直に整列することが知られており(Davis & Greenstein 1951),背景星の偏光観測を行うことは領域を貫く局所的な磁場を検出する有力な手段となる.
観測の結果, およそ4500 個の点源から偏光を検出することができ, 本領域には銀河磁場と平行な偏光成分とそれにほぼ垂直な成分が存在することがわかった.また, 解析の結果、約4500 個のうち約3500 個の点源に対して近赤外線カラーと偏光の情報が得られた。本講演では、カラーと空間情報を利用して、銀河磁場と星形成領域に付随する磁場構造を分離し、大質量星星団形成領域における(単なる垂直成分だけでない)複雑な磁場構造の存在を示す。また、過去のミリ波連続波の観測等とも比較し、磁場構造の形成原因を議論する。さらに、分子雲における偏光効率を比較することによって、領域内の5つの大質量星形成領域NGC6334I-V における磁場構造の違いについても考察する。