VERAを用いた銀河系外縁部回転曲線プロジェクト

【日時】10月19日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】坂井 伸行(総研大 D1・三鷹、指導教員 : 本間 希樹)
【タイトル】VERAを用いた銀河系外縁部回転曲線プロジェクト
アブストラクト
(目的)
距離の不定性により未だ明らかでない銀河系の質量分布を観測的に明らかにし、銀河系の力学と構造の理解を深めたい。
(方法)
 VERAを用いたVLBI観測により距離の不定性を克服する事が出来る。VERAは目標位置精度10マイクロ秒角を有し、10kpcの距離を10%のエラーで測定する事が可能である。
 一般的に質量を見積もるツールとしては距離の関数である回転曲線が良く使われる。VERAを用いて銀河系の回転曲線を高精度に構築し、質量分布を高精度に求めて行く。
(結果)
2009年10月よりVLBI観測を始め、プレリミナリーなものも含めると4天体の年周視差測定に成功した。
特に本発表では、IRAS 05168+3634と言う天体の年周視差(距離)と固有運動測定の詳細を報告する。
この天体について、(π、μαcosδ, μδ)=(0.537 +/-0.038 mas, 0.23+/-1.07, -3.14+/-0.28 mas/yr)の測定に成功し、過去の研究では6.08kpc(Molinari et al. 1996)と求められていた運動学的距離よりも、三倍以上近い結果を得た。
(議論)
特に以下の2点に絞って議論を行う。
(i)IRAS05168の距離の妥当性
本研究の結果により、この天体の物理量はTable(下記)の様に変化する。
我々の結果は、IRAS05168の力学質量とLTE質量との比(α)が0.7と、過去知られていた0.2よりも1に近い値を示す。これはディスクの分子雲が概ね力学平衡にある(α~1)と言う過去の研究を考えると、妥当な結果と言える。
(ii)ペルセウスアームの特異運動
IRAS05168は我々の観測で、アウターアームではなくペルセウスアームに位置する事が分った。
また円運動からのズレ(特異運動)を考察すると、過去のVLBI観測で測られたペルセウスアームの天体と傾向が一致する事が分った。具体的には、銀河中心方向に向かい、かつ銀河回転から遅れる運動である。
 この様な傾向は過去の研究でも指摘されていて、例えばRusseil et al. (2007)では測光学的距離を用いる事で同様の議論をするのみならず、密度波理論との比較・見当も行っている。我々のVLBI観測でもRusseil et al. (2007)と同様な手法で、共回転半径(CR)を12.6kpcと求める事に成功した。
 この値はRusseil et al. (2007)で得られたCR=12.7kpcには極めて近いが、一般的なCRの値として知られている太陽近傍の値(CR~9kpc)とは一致しない。
上記の内容に加え、時間が許せば、現状の問題点と今後の展望、更には本研究のインパクト
などについて発表します。