N体計算を用いた惑星形成過程の研究

【日時】10月24日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】N体計算を用いた惑星形成過程の研究
【発表者(敬称略)】押野 翔一(総研大D1 ・三鷹、指導教員 牧野淳一郎)
現在、惑星系は原始惑星系円盤と呼ばれる恒星の周囲にある円盤から生まれることが示唆されている。形成過程としては、まず円盤中のダストが凝縮し微惑星となり、その後微惑星同士が衝突合体して固体惑星やガス惑星のコアが出来たと考えられている。
しかし惑星形成理論にはいまだに分かっていないことも多く、理論と観測の両面から盛んに研究されている。
本研究ではN 体計算と言う手法を用いて重力相互作用を計算して微惑星の進化過程を明かにすることを目的としている。
惑星形成でN 体計算を用いる場合2 つの困難がある。
1 つは計算する微惑星の粒子数である。N 体計算は計算量が粒子数の2 乗に比例して大きくなる。そのため領域を広くとって計算しようとすると計算コストが高くなってしまう。
2 つ目は惑星形成時間の長さである。惑星の形成時間は惑星系円盤の寿命程度(10e6 年から10e7 年) かかると考えられている。
惑星の軌道周期はこれよりずっと短いために計算時間を長くとらなければならない。以上の理由により惑星系でのN 体計算には長い時間がかかる。
そのため現在研究に用いるためのN 体計算を高速に行うコード開発を行っている。今回のコロキウムではその現状について報告する。

Low-luminosity AGN M81の電波放射機構の観測的研究

【日時】10月17日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】Low-luminosity AGN M81の電波放射機構の観測的研究
【発表者(敬称略)】秦 和弘(総研大M2 ・三鷹、指導教員 川口 則幸)
活動銀河中心核の中でも比較的暗いAGNは低光度AGN(low-luminosity AGN,LLAGN)と呼ばれている。低光度AGN は近傍銀河の約40%に存在することがわかっており、また全AGN 種族の中でも圧倒的多数が低光度AGNに属するという、極めてありふれた天体である。しかしながらその暗さゆえ、明るいAGN に比べて観測的蓄積が乏しくその描像に関しては明らかになっていない点が数多く残されている。
低光度AGN 研究において、その降着機構、放射機構の解明というのは1つの重要なテーマである。低光度AGNは極めてsub-Eddington な光度、紫外線バンプの欠如という観測事実から、標準円盤とは全く異なる性質を持った降着流が存在する事が示唆されている。
理論的には、ガス密度が薄く放射冷却が極めて非効率ないわゆるADAF(Advection-Dominated Accretion Flow) またはRIAF(Radiatively-Inefficient Accretion Flow) が広い波長帯に渡ってSED を説明することから有力なモデルだとされる。
ところが電波帯に限ってADAFは実際に観測される電波強度を再現できない傾向にある。この追加電波成分の起源が現在も論争中である。
そこで現在、低光度AGNの電波放射機構についてより詳細に追求するため、代表的な低光度AGN M81 についてVLBIデータを用いた解析を行っている。M81 は例外的に近い低光度AGNであり、みかけのシュバルツシルト半径も大きいため、よりブラックホールに近い領域まで分解して放射機構を検証する事が可能である。
今回はM81 のVLBI データ解析から得られた電波放射の性質について途中経過を報告する。

特別公開総研大企画「総研大生による天文台ツアー」

国立天文台(三鷹キャンパス)特別公開が10/25(土)に開かれます。
今年も、その特別公開期間中に総合研究大学院大学・天文科学専攻の学生による天文台構内ガイドツアーが以下のように行われます。
是非、ご参加ください。
「総研大生による天文台ツアー」
~天文台、ちょっとひとめぐりしませんか?~
【日時】 2008年10月25日(土)
【受付時間】
 第1回 10:00~10:30
 第2回 12:00~12:30
 第3回 14:00~14:30
【受付場所】 国立天文台・三鷹 構内グラウンド前駐車場テント
天文台南側を回る「銀河系コース」
天文台西側を回る「太陽系コース」
の2種類のコースから選ぶことができます。
コースの詳細はポスターを御覧ください。(PDF形式)
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輻射磁気流体シミュレーションによる連星系形成条件の研究

【日時】10月3日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】輻射磁気流体シミュレーションによる連星系形成条件の研究
【発表者(敬称略)】富田 賢吾 (総研大M2 ・三鷹、指導教員 富阪 幸治)
星間媒体から分子コアを経て原始星へと至る星形成過程(特に低質量星形成)は古くからよく研究されている分野であるが、今なお未解決の問題が多数残されている。
特に、Initial Mass Function(IMF)を理論的に決定することは星形成研究の究極的目標の一つであるが、理論的・観測的に幾つかの示唆は得られているものの、未だ統一的な理解は得られていない。観測的には分子雲コアの質量関数(CMF)がIMFと似通っていることが指摘されており、解析的または数値的にCMFを再現する
研究もなされているが、”初期条件”であるCMFから”終状態”のIMFに至る過程は非常に複雑であり単純に対応付けることはできないという難しさがある。
Machida et al. 2008は分子コアが重力収縮する過程で分裂する条件を数値計算を用いて統計的に調べた研究である。このシミュレーションは(i)三次元(ii)大ダイナミックレンジを扱うための多重格子法(iii)自己重力(iv)磁場といった星形成で重要となる要素を含んでいるが、ガスの熱的進化を球対称一次元輻射流体計算の中心要素の進化から求めたポリトロープ関係で扱っている。この近似は中心部分については正しいが、外側では熱的進化を大きく誤ることがWhitehouse & Bate 2006で指摘されている。自己重力的なガスが
分裂する条件は系の温度分布に強く依存するため、熱的進化の取り扱いが系の動的進化に影響する可能性は極めて高く、ガスの熱的進化をより正確に取り扱う必要がある。
このためには(v)輻射輸送を取り扱う必要があり、近似的にではあるがこれを取り入れたシミュレーションコードの開発に現在取り組んでいる。
輻射流体シミュレーションはその計算コストの大きさからこれまであまり取り組まれてこなかったが、計算機の発達に伴って近年各地で積極的に研究が進められている。この様な問題に限らず輻射輸送は宇宙物理学における素過程として重要であり、これを取り入れることでコードの応用範囲はこれまでよりも大きく広がることが期待される。
本発表では星形成過程に残された問題とそれに対する我々のアプローチを説明し、コード開発の現状及び今後の展望について報告する。

重力レンズで探る銀河団質量光度比の研究

【日時】9月3日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】重力レンズで探る銀河団質量光度比の研究
【発表者(敬称略)】内海 洋輔(総研大 M2・三鷹、指導教員 宮崎 聡)
階層的構造形成モデルによれば、多数の銀河が重力で引きつけ合って銀河団が形成されるので、銀河の集合体である銀河団の質量光度比が大きくばらつくことは期待されない。従来の銀河団のメンバーの速度分散を使った質量の推定からは銀河団物理状態を仮定する必要があったために質量光度比のバラツキを議論するのは困難であった。
一方で、銀河団による弱重力レンズ効果を使えば、銀河団の物理状態を仮定することなく質量を推定することができる。ところが、弱重力レンズ効果を使った銀河団質量光度比の測定を行っても、依然銀河団質量光度比が100~1000(Msun/Lsun)程度と大きくばらついて報告されている。
これは、異なる観測システムで決められたり、定義が異なっていたりするために質量光度比の測定値同士の比較が容易ではないためである。したがってこのばらつきが銀河団固有のものであるか、系統的なものであるかを結論づけるのが難しいのが現状である。
これをアーカイブデータで統一的に調べることにした。2001年4月から現在までに公開されている、すばる/Suprime-Camのアーカイブデータを整理し、観測条件の良いものを調べたところ、0.1