【日時】11月14日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】低光度セイファート銀河における星形成活動の寄与
【発表者(敬称略)】大井 渚(総研大 ・三鷹M2、指導教員 今西 昌俊)
活動銀河核(AGN) とは母銀河と同等がそれ以上のエネルギーを銀河中心から放射している天体で、輝線幅から2 つのタイプ(1 型,2 型)に分類されている。莫大なエネルギーを放つエンジンとして、中心に存在する超巨大ブラックホール(SMBH)による重力開放エネルギーが考えられている。しかし、物質を効率よく降着させるメカニズムについては未だ解明されていない。近年、中心付近で起こる爆発的星形成活動(SB)が強い影響を及ぼしている可能性があると考えられているが、SMBH からの放射が非常に強いためにその影響を調べることは困難であった。
これまでの研究から、近傍の高光度セイファート銀河においては、星間空間に広く分布する多環芳香族炭化水素(PAH) の輝線や星の大気に含まれるCO 分子の吸収帯を用いることで、星からの放射をAGNからの放射から分離し、AGN規模と中心部でのSB の規模に強い相関があることがわかっている。
そこで我々は、ハワイ島マウナケア山頂にあるNASA の望遠鏡IRTF/SpeXを用いて、LINER に近い低光度セイファート銀河8天体、先行研究でSB の影響が強いと思われる高光度セイファート銀河8天体について近赤外K,L-band 同時分光を行った。その結果、低光度セイファート銀河においてもSB 規模はAGN と良い相関を持っていることがわかった。
これはSB がAGN の活動に大きく影響を及ぼしていることを示唆している。
しかしCO 吸収から求めた星光度が、セイファート1型・2型銀河で大きく異なるという結果を得た。また2型セイファート銀河については、PAH輝線強度から見積もられた星光度に対し、CO 吸収から見積もられた星光度の方がはるかに大きいという結果となった。この結果から、PAH輝線とCO吸収帯は別のものを見ている可能性があることを示唆している。
本コロキウムでは、観測と解析の結果を報告し、これからの展望について発表する。