年別アーカイブ: 2011年

Cosmological Evolution of SMBH mass-Bulge mass Relation investigated by SDSS QSOs at z~3

【日時】12月14日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】濟藤 祐理子(総研大 M1・三鷹、指導教員 : 林 左絵子 & 今西 昌俊)
【タイトル】Cosmological Evolution of SMBH mass-Bulge mass Relation investigated by SDSS QSOs at z~3
 近傍宇宙では、銀河中心の超巨大ブラックホール質量M_BHとその母銀河のバルジ質量M_bulge との間に強い相関があり、両者が共進化してきたことを示唆する観測結果が多数得られている(e.g. Marconi & Hunt 2003)。一方、複数の理論モデルでは、M_BH/M_bulge比の異なる赤方偏移進化が予言されており、特に高赤方偏移ほどモデル間の差は大きくなっている。これらのモデルに対し観測的に制限を与える事は、ブラックホールと銀河の進化において鍵となるメカニズムを特定する上で重要であり、そのためには赤方偏移3 以上の天体について観測を行う必要がある。しかしながらこれまでのブラックホール・バルジ関係の観測的研究は、主に赤方偏移が2 以下の観測しか行われておらず、赤方偏移進化の理論モデルについて強い制限は与えられていない。
 そこで我々は、SDSSクエーサーサンプルの中から赤方偏移3.11-3.50の天体を選び出し、これらに対して近赤外線分光観測によるブラックホール質量の導出とAO撮像観測によるバルジ質量の導出を行い、提唱されている理論モデルに対して観測的に制限を与えたいと考えている。これまでに、WHT/LIRIS、IRTF/SpeX、UKIRT/UISTを用いて分光観測を行い、我々のサンプルのうち明るい天体についてはほぼ分光観測が終了している。本講演では、具体的な研究手法について紹介すると共に、現在の研究の進行状況について報告する。

A High Redshift Protocluster Proved by Wide-field Imaging

【日時】11月30日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】利川 潤(総研大 M2・三鷹、指導教員 : 柏川 伸成
【タイトル】
A High Redshift Protocluster Proved by Wide-field Imaging
【アブストラクト】
銀河団は宇宙で最も重い、重力的に束縛された天体である。このような大質量の天体はダークマターの密度分布の特に高密度な領域において形成され、フィラメント構造の交差点のような場所に存在すると考えられる(Springel et al. 2005)。
また銀河団のように高密度環境に存在する銀河は”red sequence”(Visvanathan 1977)や形態密度関係(Dressler 1980)などのようにフィールド銀河とは異なる性質を持っていることが分かっている。
銀河団がどのように形成されたかを調べることにより「宇宙の構造形成がどのように進むのか」、「高密度環境において銀河はどのように進化するのか」という問題にアプローチすることができる。
銀河団形成を解明するためには様々な段階を調べることが必要であるが、銀河団が完成する前の段階の”原始銀河団”を研究することも重要である。
我々は特に形成の最初の段階と予測される遠方の原始銀河団を研究する。
まずSubaru Deep Fieldにおいて赤方偏移6の原始銀河団の発見を目指し研究を行ってきた。
Subaru/SprimeCam z’-bandで30時間積分の撮像データを用いることで258天体ものz~6 Lyman Break Galaxyを発見することができ、銀河の空間分布を詳細に調べることができた。
その結果、有意に高密度な領域が存在し、その高密度領域に対して分光追観測を行うことで8天体が奥行き方向についても集中していることが確かめられた。これをもって我々はz~6原始銀河団を発見したと考えている。
本発表ではこの発見について報告する。
この非常に遠方の原始銀河団の発見から、最初に述べたような大規模構造や銀河進化に関する問題にどのように取り組んでいくか、現在行なっている解析も踏まえて今後の展望についても紹介したい。

Statistical study of transient active phenomenon around polar corona using Hinode/XRT.

【日時】11月16日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】佐古 伸治(総研大 D1・三鷹、指導教員 : 渡邊 鉄哉
【タイトル】
Statistical study of transient active phenomenon around polar corona using Hinode/XRT.
【アブストラクト】
我々が観測できる太陽大気の内、最外層である太陽コロナはさまざまなスケールを持つ爆発現象が発生している。その中でも短寿命な活動現象は、流れを伴うX線ジェットや単純な増光現象であるトランジェントブライトニングがあげられる。これらの短寿命活動現象は、太陽観測衛星「ようこう」の観測から、太陽コロナで生じる磁気リコネクションによって発生すると考えられるようになった。
「ようこう」衛星に搭載された軟X線望遠鏡で撮像された太陽全面強度画像からX線ジェットを検出した結果、コロナホールは10%程度と他の領域よりも低いことが報告されている。コロナホールは極域に分布しやすいため、太陽極域が活動の低い領域と考えられるようになった。2006年から太陽観測衛星「ひので」が打ちあがり、高分解能観測で緯度勾配の強い極域の現象も詳細に観測できるようになった。「ひので」衛星に搭載されたX線望遠鏡の観測結果から、太陽極域コロナホールではX線ジェットが頻繁に発生しておりいることが示され、「ようこう」衛星のときの解釈と異なる見解であった。
本研究の最終目的は、短寿命活動現象の磁気リコネクションによるエネルギー解放過程を詳細に研究することである。このエネルギー解放過程は周囲の磁場環境によって変化することが考えられる。そのため、それぞれ異なる磁場構造を持つ領域で発生した短寿命活動現象の違いを調べる必要がある。特に、活動が高いことが明らかになった極域に含まれるコロナホール・静穏領域の異なる磁場構造をもつ領域で発生する短寿命活動現象の特徴を比較した研究はない。今回、「ひので」衛星のX線望遠鏡で撮像されたコロナホール、静穏領域を含む極域周辺及び緯度の異なる赤道域静穏領域のそれぞれのX線強度画像からX線ジェット、ブライトニングを検出し、磁場構造の違いが短寿命活動現象の特徴に現れるかどうかを調べた。その結果、X線ジェットは、コロナホール・静穏領域よりもコロナホール境界のほうが発生頻度が高く、トランジェントブライトニングの発生頻度は、コロナホールよりもコロナホール境界・静穏領域のほうが高いことがそれぞれわかった。今回のコロキウムでは、検出したX線ジェット及びトランジェントブライトニングの特徴に関する統計的結果を報告し、主にその発生頻度の違いを考察していく。

Multi-Object and long-slit spectroscopy of very low mass brown dwarfs in Orion Nebular Cluster

【日時】11月8日(水) 10:30~12:00【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】末永 拓也(総研大D1・三鷹、指導教員 : 田村 元秀)
【タイトル】Multi-Object and long-slit spectroscopy of very low mass brown dwarfs in Orion Nebular Cluster
【アブストラクト】
初期質量関数(Initial Mass Fucntion)は星形成理論で説明されるべきもっとも重要な観測量の一つである。
この関数は、Salpter(1955)によって提唱されて以来長きにわたって研究がなされてきており、
太陽質量付近では比較的よくその描像が分かってきているが、大質量側・低質量側の両端では
まだよく分かっていない。本研究ではその低質量側を詳細に調べることを目的としている。
低質量側のうち80木星質量以下を構成する天体を褐色矮星という。
褐色矮星は非常に低温で内部で定常的に核融合反応を起こすことができないので、年齢ともに冷えて暗くなってしまう。そこでそのような天体が非常に若く明るく存在している領域である星形成領域で初期質量関数の低質量側の研究が進められている。
私たちはそのうち、非常に有名な大質量星形成領域であるオリオン大星雲において分光観測を行ってきている。
オリオン大星雲は比較的近傍で星が密集して存在しているため初期質量関数の研究には最適である。
観測はすばる望遠鏡に搭載された多天体分光器MOIRCSと、岡山観測所の近赤外分光装置であるISLEを用いて、
14天体の褐色矮星候補天体に対して行われた。
解析の結果9天体が褐色矮星質量をもつことが分かり、そのうち2天体は本研究で初めてその分光質量が求められた。
本発表では以上のようにこれまで行ってきた研究の内容を説明し、
最後に先行研究を含めてオリオン大星雲の初期質量関数について言及する予定である。

Linear and circular imaging polarimetry of the Chamaeleon infrared nebula

【日時】11月2日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】Kwon Jungmi(総研大 D2・三鷹、指導教員 : 田村 元秀)
【タイトル】Linear and circular imaging polarimetry of the Chamaeleon infrared nebula
ABSTRACT ( Gledhill et al. 1996 )
We present linear and circular imaging polarimetry observations of the Chamaeleon infrared nebula, a bipolar reflection nebula in the Chamaeleon I dark cloud, at near-infrared (JHKn) wavelengths.
These are amongst the first imaging circular polarimetry results for a star-forming region. The detection of both high degrees of linear polarization and a significant degree of circular polarization in the extended nebulosity allows us to comment on the scattering geometry and the range of particle sizes present.
We develop a model incorporating a polarized source which can successfully account for the observed linear and circular polarimetry and for the asymmetries in nebular brightness (the ‘bright rim’ structures) seen in this and other objects (e.g., NGC 2261/R Mon). In order to do so, the model requires a non-axisymmetric illumination of the nebula, and we discuss possible origins for this asymmetry, including disruption of a circumstellar disc by binary protostars.