【日時】11月8日(水) 10:30~12:00【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】末永 拓也(総研大D1・三鷹、指導教員 : 田村 元秀)
【タイトル】Multi-Object and long-slit spectroscopy of very low mass brown dwarfs in Orion Nebular Cluster
【アブストラクト】
初期質量関数(Initial Mass Fucntion)は星形成理論で説明されるべきもっとも重要な観測量の一つである。
この関数は、Salpter(1955)によって提唱されて以来長きにわたって研究がなされてきており、
太陽質量付近では比較的よくその描像が分かってきているが、大質量側・低質量側の両端では
まだよく分かっていない。本研究ではその低質量側を詳細に調べることを目的としている。
低質量側のうち80木星質量以下を構成する天体を褐色矮星という。
褐色矮星は非常に低温で内部で定常的に核融合反応を起こすことができないので、年齢ともに冷えて暗くなってしまう。そこでそのような天体が非常に若く明るく存在している領域である星形成領域で初期質量関数の低質量側の研究が進められている。
私たちはそのうち、非常に有名な大質量星形成領域であるオリオン大星雲において分光観測を行ってきている。
オリオン大星雲は比較的近傍で星が密集して存在しているため初期質量関数の研究には最適である。
観測はすばる望遠鏡に搭載された多天体分光器MOIRCSと、岡山観測所の近赤外分光装置であるISLEを用いて、
14天体の褐色矮星候補天体に対して行われた。
解析の結果9天体が褐色矮星質量をもつことが分かり、そのうち2天体は本研究で初めてその分光質量が求められた。
本発表では以上のようにこれまで行ってきた研究の内容を説明し、
最後に先行研究を含めてオリオン大星雲の初期質量関数について言及する予定である。