年別アーカイブ: 2010年

様々な彗星からもたらされる流星雨の可能性

【日時】6月23日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】堀井 俊(総研大 D3・三鷹、指導教員 : 渡部 潤一)
【タイトル】様々な彗星からもたらされる流星雨の可能性
流星群は、地球が彗星から放出された濃いダストのトレイルを横切るときに出現する。彗星から放出されたダストは、その放出されたときの軌道要素をもとに宇宙空間を運動し、惑星などによる様々な摂動を受けながら母彗星の動きとは独立した軌道進化をたどる。それにより、母彗星の動きではなく、それぞれのダストの道筋によって流星群の出現の可能性のありなしがかかってくることになる。
これがダスト・トレイル理論である。このダスト・トレイル理論は本格的に使われるようになってから月日は浅いが、より正確で精度のよい流星群の出現予測ができるようになってきている。
今回の発表では、これまでにこのダスト・トレイル理論を用いて調べてきたいくつかの彗星からもたらされる流星雨の可能性について紹介する。
また、今年の秋にハートレー第2彗星(103P/Hartley)が地球に接近することが今注目されている。地球に最も接近するのは10月20日頃で、その距離は約0.12AUであり、等級にして約4等まで明るくなるとされている。さらに、この彗星の軌道は地球の軌道に沿うように並行しており、公転速度に大きな差もないため、10月から11月にかけて、両者が接近した状態が長く続くことが大きな特徴になっている。この彗星と地球が長い期間に渡って接近することに伴い、流星群の出現も期待される。その出現の可能性についても計算の途中経過を発表する。

M型矮星に対する低周波電波観測の結果について

【日時】6月16日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】小池 一隆(総研大 D3・野辺山、指導教員 : 出口 修至)
【タイトル】M型矮星に対する低周波電波観測の結果について
M型矮星は、恒星の中でも特に表面温度の低い星(<3900 K)です。 このような低温矮星に関する詳しい研究は、始められてまだ10年ほどしか経っておらず、電波での研究は、近年ようやく観測が行われるようになり、議論されはじめたところです。 低温矮星からの電波は、これまでに十数個程のM、L型星に対して4.8GHzや8.4GHzで検出されています。 これら電波の放射機構としては、当初、その周波数や激しい強度変動からgyrosynchrotron 放射であると考えられてきましたが、その後、100%に近い円偏光度を持った電波放射が観測されると、新たに electron-cyclotron maser 放射という放射機構が提案され、さらに今日では、そういった変動の見られない定常的な電波放射も観測されるなど、複数の放射機構が存在すると考えられています。 そこで私たちは、他の低温矮星についても電波観測を行い、いずれの放射機構が多数を占めるのか、また新たな特徴を持った電波放射は見られないか、調査することにしました。 本発表では、昨年の6月にインドのGiant Metrewave Radio Telescope (GMRT)を用いて行ったM型矮星の電波観測結果について報告します。 この観測では、近くにM型矮星が見られる電波源(FIRST天体、1400MHz)8天体について、3つの低周波数(1400、610、240MHz)で観測を行いました。

超新星背景ニュートリノ検出率予測のニュートリノ温度依存性について

【日時】6月9日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】鈴木 重太朗(総研大 D3・三鷹、指導教員 : 梶野 敏貴)
【タイトル】超新星背景ニュートリノ検出率予測のニュートリノ温度依存性について
重力崩壊型超新星爆発の際には、多量のニュートリノが発生して束縛エネルギーの大半を持ち去ると考えられている。また、ニュートリノは他の物質との反応性が極めて乏しいことから、過去の超新星爆発の際に発生したニュートリノが現在でも宇宙空間に存在していると考えられており、近年中に稼動を始める見込みの大型の水チェレンコフ検出器を用いれば、これらの持つ情報を解析することが出来る可能性があり、超新星爆発やニュートリノ自体についての研究に大きく寄与すると考えられる。
但し、超新星背景ニュートリノの検出率に関しては幾つかの不定性が指摘されており、そのなかでも検出率及びエネルギースペクトルに大きく影響を及ぼす要素として、超新星内部のニュートリノ温度が明らかになっていないことがあげられる。
そこで、本研究では、超新星元素合成と銀河化学進化モデルを元にニュートリノ温度をフレーバーごとに分けて推定することで、このような不定性を減じ、ニュートリノ検出率及びそのエネルギースペクトルをこれまでより精密に予測する方法を提案する。
今回の発表では、研究の概要と結果のうち、前回発表以降に進展した部分を中心に報告する。

「総研大入試ガイダンス」ご報告(・ω・▼)ノシ

「総研大入試ガイダンス」ご報告(・ω・▼)ノシ
貴島 政親(総合研究大学院大学 物理科学研究科 天文科学専攻)
2010年05月22日(土)に国立天文台(三鷹キャンパス)にて、総研大入試ガイダンスが行われました。雨天・休日にも関わらず、25名の参加者、20名以上の総研大教員・学生が参加し、盛り上がりを見せました(・□・▼)わわわー

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銀河間重力相互作用が分子ガスに与える影響について

【日時】5月26日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】金子 紘之(総研大 D3・野辺山、指導教員 : 久野 成夫)
【タイトル】銀河間重力相互作用が分子ガスに与える影響について
銀河同士の近接相互作用(衝突、合体)現象を起こしている天体、相互作用銀河は銀河の進化に対して重要な役割を持つ。
例えば、渦巻銀河から楕円銀河へと進化や、高輝度赤外線銀河(ULIRGs)の発現にもこれら相互作用銀河が影響しているといわれている。
相互作用銀河の特筆すべき性質の一つに爆発的な星形成があげられる。
数値計算によって、多くの研究が進められており、いくつかのメカニズムが提唱されている。
しかしながら、星形成の直接の母体である分子ガスに関する今までの観測は、装置的、時間的資源の制限からその殆どがごく限られた領域で行われているに過ぎず、星形成が活発化していく過程を理解するには不十分である。
爆発的星形成の前段階である相互作用初期~中期の天体に対して系の内部を分解して観測し相互作用が分子ガスに与える影響を詳細に調べることは爆発的星形成のメカニズムを明らかにする上で非常に重要である。
そこで我々は、野辺山45m電波望遠鏡を用いて、比較的近傍にあるいくつかの相互作用初期~中期と目される相互作用銀河に対して12CO(1-0)輝線マッピング観測を続けてきた。
本発表では、この観測結果を中心に報告する。