年別アーカイブ: 2008年

Tνを考慮したSupernova Relic Neutrinoの検出率について

【日時】11月7日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】Tνを考慮したSupernova Relic Neutrinoの検出率について
【発表者(敬称略)】鈴木 重太朗(総研大D1 ・三鷹、指導教員 梶野敏貴)
観測的宇宙論における最近の関心事の一つに大質量星の形成率があげられる。
大質量星の形成率を時間的に遡って調べるための手段としては、これまでに用いられてきた紫外線のほかに、最近のニュートリノ検出装置の性能向上により、2 型超新星爆発の際に多量に放出されるニュートリノ(SRN)のエネルギースペクトルを使って調べる方法が用いられ始めている。
但し、SRN を使って大質量星の形成率を調べる方法にはいくつかの問題点があり、その一つとしてニュートリノのフレーバー毎の温度が明らかになっていないことがあげられる。本研究では、軽元素に関する銀河化学進化(GCE) を用いて、SRN 検出率におけるニュートリノ温度由来の不確かさを取り除く方法を提案する。
具体的にはB(11)がType-2 超新星と宇宙線の両方によって合成されるのに対し、B(10) は宇宙線によってのみ合成されることを用いると、フレーバー毎のニュートリノ温度を推定することができ、SRN のエネルギースペクトルをより精密化することができると考えられる。今回の発表では、本研究の概要・手法および結果の一部について述べる。

重力相互作用の初期段階にある銀河ペアNGC4567/4568の観測的研究

【日時】10月31日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】重力相互作用の初期段階にある銀河ペアNGC4567/4568の観測的研究
【発表者(敬称略)】金子 紘之(総研大 D1・野辺山、指導教員 久野 成夫)
銀河間の重力相互作用は楕円銀河や高輝度赤外線銀河の形成といった銀河の進化、及び爆発的星形成やAGN に代表される銀河の活動性と密接な関連がある。また、初期宇宙に於ける銀河自体の形成にも大きな役割を担っていることが明らかになりつつあり、銀河間重力相互作用は銀河研究にとって重要な現象である。
相互作用をしている銀河(相互作用銀河) は一般の銀河に比べ遠赤外領域で強い放射が見られ、星形成活動が活発化していることが知られている(e.g., Soifer et al., 1984)。一方で、何故このような活発な星形成活動が引き起こされるかは未だ解明されていない。
これまでの研究から、(衝突・合体後ではなく) 相互作用中期の時点で劇的な星形成活動(スターバースト) の生じている天体が複数例報告されている。従って、星形成が活発化する原因を探るには、活発化前である相互作用の初期段階に於いて、星形成の材料である分子ガスに対し、相互作用が与える影響を明らかにすることが不可欠である。
数値計算によると星形成活動の活発化は、分子ガスが銀河中心に落ち込んで密度が増大することに伴う星形成効率の上昇が原因(e.g.,Barnes & Hernquist, 1996) とされている。
こうした背景もあり、今までのCO観測は比較的フラックスの強い銀河中心領域などの一部分に限定されて行われているものが大半であった(e.g., Zhu et al., 1999) 。その為、ガスの分布や運動構造に関する観測的な知見、そして各銀河の質量と言った基本的な物理量の情報でさえ得られていない。そのため、銀河中心のみならず相互作用銀河全領域をカバーする観測が求められる。
そこで我々は、野辺山45m 電波望遠鏡を用い、NGC 4567 とNGC 4568 の2 つの銀河からなる相互作用の初期段階にある銀河ペアの系全面に対して12CO(J = 1 – 0) 輝線のマッピング観測を行った。本コロキウムでは、この観測の詳細と得られた結果について議論し、今後の展望について発表する。

N体計算を用いた惑星形成過程の研究

【日時】10月24日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】N体計算を用いた惑星形成過程の研究
【発表者(敬称略)】押野 翔一(総研大D1 ・三鷹、指導教員 牧野淳一郎)
現在、惑星系は原始惑星系円盤と呼ばれる恒星の周囲にある円盤から生まれることが示唆されている。形成過程としては、まず円盤中のダストが凝縮し微惑星となり、その後微惑星同士が衝突合体して固体惑星やガス惑星のコアが出来たと考えられている。
しかし惑星形成理論にはいまだに分かっていないことも多く、理論と観測の両面から盛んに研究されている。
本研究ではN 体計算と言う手法を用いて重力相互作用を計算して微惑星の進化過程を明かにすることを目的としている。
惑星形成でN 体計算を用いる場合2 つの困難がある。
1 つは計算する微惑星の粒子数である。N 体計算は計算量が粒子数の2 乗に比例して大きくなる。そのため領域を広くとって計算しようとすると計算コストが高くなってしまう。
2 つ目は惑星形成時間の長さである。惑星の形成時間は惑星系円盤の寿命程度(10e6 年から10e7 年) かかると考えられている。
惑星の軌道周期はこれよりずっと短いために計算時間を長くとらなければならない。以上の理由により惑星系でのN 体計算には長い時間がかかる。
そのため現在研究に用いるためのN 体計算を高速に行うコード開発を行っている。今回のコロキウムではその現状について報告する。

Low-luminosity AGN M81の電波放射機構の観測的研究

【日時】10月17日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】Low-luminosity AGN M81の電波放射機構の観測的研究
【発表者(敬称略)】秦 和弘(総研大M2 ・三鷹、指導教員 川口 則幸)
活動銀河中心核の中でも比較的暗いAGNは低光度AGN(low-luminosity AGN,LLAGN)と呼ばれている。低光度AGN は近傍銀河の約40%に存在することがわかっており、また全AGN 種族の中でも圧倒的多数が低光度AGNに属するという、極めてありふれた天体である。しかしながらその暗さゆえ、明るいAGN に比べて観測的蓄積が乏しくその描像に関しては明らかになっていない点が数多く残されている。
低光度AGN 研究において、その降着機構、放射機構の解明というのは1つの重要なテーマである。低光度AGNは極めてsub-Eddington な光度、紫外線バンプの欠如という観測事実から、標準円盤とは全く異なる性質を持った降着流が存在する事が示唆されている。
理論的には、ガス密度が薄く放射冷却が極めて非効率ないわゆるADAF(Advection-Dominated Accretion Flow) またはRIAF(Radiatively-Inefficient Accretion Flow) が広い波長帯に渡ってSED を説明することから有力なモデルだとされる。
ところが電波帯に限ってADAFは実際に観測される電波強度を再現できない傾向にある。この追加電波成分の起源が現在も論争中である。
そこで現在、低光度AGNの電波放射機構についてより詳細に追求するため、代表的な低光度AGN M81 についてVLBIデータを用いた解析を行っている。M81 は例外的に近い低光度AGNであり、みかけのシュバルツシルト半径も大きいため、よりブラックホールに近い領域まで分解して放射機構を検証する事が可能である。
今回はM81 のVLBI データ解析から得られた電波放射の性質について途中経過を報告する。