Low-luminosity AGN M81の電波放射機構の観測的研究

【日時】10月17日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】Low-luminosity AGN M81の電波放射機構の観測的研究
【発表者(敬称略)】秦 和弘(総研大M2 ・三鷹、指導教員 川口 則幸)
活動銀河中心核の中でも比較的暗いAGNは低光度AGN(low-luminosity AGN,LLAGN)と呼ばれている。低光度AGN は近傍銀河の約40%に存在することがわかっており、また全AGN 種族の中でも圧倒的多数が低光度AGNに属するという、極めてありふれた天体である。しかしながらその暗さゆえ、明るいAGN に比べて観測的蓄積が乏しくその描像に関しては明らかになっていない点が数多く残されている。
低光度AGN 研究において、その降着機構、放射機構の解明というのは1つの重要なテーマである。低光度AGNは極めてsub-Eddington な光度、紫外線バンプの欠如という観測事実から、標準円盤とは全く異なる性質を持った降着流が存在する事が示唆されている。
理論的には、ガス密度が薄く放射冷却が極めて非効率ないわゆるADAF(Advection-Dominated Accretion Flow) またはRIAF(Radiatively-Inefficient Accretion Flow) が広い波長帯に渡ってSED を説明することから有力なモデルだとされる。
ところが電波帯に限ってADAFは実際に観測される電波強度を再現できない傾向にある。この追加電波成分の起源が現在も論争中である。
そこで現在、低光度AGNの電波放射機構についてより詳細に追求するため、代表的な低光度AGN M81 についてVLBIデータを用いた解析を行っている。M81 は例外的に近い低光度AGNであり、みかけのシュバルツシルト半径も大きいため、よりブラックホールに近い領域まで分解して放射機構を検証する事が可能である。
今回はM81 のVLBI データ解析から得られた電波放射の性質について途中経過を報告する。