【日時】10月31日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】重力相互作用の初期段階にある銀河ペアNGC4567/4568の観測的研究
【発表者(敬称略)】金子 紘之(総研大 D1・野辺山、指導教員 久野 成夫)
銀河間の重力相互作用は楕円銀河や高輝度赤外線銀河の形成といった銀河の進化、及び爆発的星形成やAGN に代表される銀河の活動性と密接な関連がある。また、初期宇宙に於ける銀河自体の形成にも大きな役割を担っていることが明らかになりつつあり、銀河間重力相互作用は銀河研究にとって重要な現象である。
相互作用をしている銀河(相互作用銀河) は一般の銀河に比べ遠赤外領域で強い放射が見られ、星形成活動が活発化していることが知られている(e.g., Soifer et al., 1984)。一方で、何故このような活発な星形成活動が引き起こされるかは未だ解明されていない。
これまでの研究から、(衝突・合体後ではなく) 相互作用中期の時点で劇的な星形成活動(スターバースト) の生じている天体が複数例報告されている。従って、星形成が活発化する原因を探るには、活発化前である相互作用の初期段階に於いて、星形成の材料である分子ガスに対し、相互作用が与える影響を明らかにすることが不可欠である。
数値計算によると星形成活動の活発化は、分子ガスが銀河中心に落ち込んで密度が増大することに伴う星形成効率の上昇が原因(e.g.,Barnes & Hernquist, 1996) とされている。
こうした背景もあり、今までのCO観測は比較的フラックスの強い銀河中心領域などの一部分に限定されて行われているものが大半であった(e.g., Zhu et al., 1999) 。その為、ガスの分布や運動構造に関する観測的な知見、そして各銀河の質量と言った基本的な物理量の情報でさえ得られていない。そのため、銀河中心のみならず相互作用銀河全領域をカバーする観測が求められる。
そこで我々は、野辺山45m 電波望遠鏡を用い、NGC 4567 とNGC 4568 の2 つの銀河からなる相互作用の初期段階にある銀河ペアの系全面に対して12CO(J = 1 – 0) 輝線のマッピング観測を行った。本コロキウムでは、この観測の詳細と得られた結果について議論し、今後の展望について発表する。