コロキウム」カテゴリーアーカイブ

星形成領域におけるAKARI赤外線観測

【日時】1月16日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】星形成領域におけるAKARI赤外線観測
【発表者(敬称略)】佐藤 八重子(総研大 D1・三鷹、指導教員 田村 元秀)
2006年に打ち上げられたAKARIは、赤外線での全天サーベイを目的とした赤外天文衛星である。AKARIには2つの装置が搭載されており、近赤外線から遠赤外線(1.7~180 micron)の広い波長域で撮像・分光観測が行なわれ、多くの成果を残してきた。
現在は冷却用のヘリウムがなくなり、近赤外線のみの観測を行なっている。
これまでに、我々は星形成グループのミッションとしてAKARIでの撮像観測を行ない、その数約200視野に及ぶ。これらにおいて、一次処理を行ない、測光解析を行なうための工夫を議論してきた。
星形成過程における個々の星周構造を研究していくために、星のクラスターがあり、重い星を含まない領域を数視野選んだ。
O型星のような重い星を含まないような中質量星形成領域では、原始星は比較的進化が遅いため、また大質量星による影響がないため、星周構造が残りやすいと考えられる。こういった領域で、クラスターとしてより多くの天体が検出されることで、より多くの星周構造を持つ天体を検出されると期待される。
近赤外線(3,4micron)・中間赤外線(7,11micron)のデータを用いて解析を行ない、各視野においてそれぞれ星の分類を行なっていった。
今回は、その1例として、IRSF/SIRIUSでの観測・解析を行なってきた星形成領域GGD12-15の解析結果を紹介する。

M型矮星の低周波数帯での電波観測について

【日時】12月19日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】M型矮星の低周波数帯での電波観測について
【発表者(敬称略)】小池 一隆(総研大D1 ・野辺山、指導教員 出口 修至)
これまでに恒星からの電波は、10 個程のM、L型星に対して4.8GHz や8.4GHz で検出されています。これら電波の放射機構としては、当初、その周波数や強度からgyrosynchrotron放射であると考えられていましたが、その後、100 %に近い円偏光度を持った電波放射が観測されると、新たにelectron-cyclotron maser 放射という考えが出てくるなど、現在のところ、まだ良く分かっていません。
これら2つの考えを選り分ける手段としては、MHz 帯での低周波数電波観測が考えられ、もし、electron-cyclotron maser 放射であるとすると、低周波(数十~数百MHz) においても強い電波放射が期待できます。
そこで、私たちは低周波電波源のカタログ(LVSS カタログ、74MHz)の中から低温矮星に同定できる低周波電波源があるのかどうか調査し、これら低温矮星の電波放射機構を解明したいと考えました。
そして、今年の6月にインドのプネーにあるGiant Metrewave Radio Telescope (GMRT)で2つの低温矮星について、240MHz の低周波数電波観測を行ってきましたので、今回はその結果について報告します。
また、先行研究において、電波放射をする低温矮星が光学観測でも増光することが確認されており、低温矮星の電波放射機構を調べる上でも、増光の有無を観測する必要性が指摘されています。
そこで、インドで観測した2天体のうちの1天体について、今年の5月に、東京大学の木曽観測所において、105cm シュミット望遠鏡を用いた光学観測も行っているため、その結果についてもお話ししたいと思います。

Signature of Chromospheric Downflows in Acoustic Travel-time Measurements from Hinode

【日時】12月5日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】Signature of Chromospheric Downflows in Acoustic Travel-time Measurements from Hinode
【発表者(敬称略)】長島 薫(総研大 D2・三鷹、指導教員 関井 隆)
We report on detection of chromospheric downflows in two emerging magnetic flux regions by time-distance helioseismology analysis. We use both chromospheric intensity oscillation data in Ca ii H line and photospheric Dopplergrams in Fe i 557.6nm line observed by Solar Optical Telescope (SOT) onboard Hinode for our analyses. By crosscorrelating oscillation signals, we have detected a travel-time anomaly in these emergingflux regions; outward travel time is about a half minute shorter than inward travel time in the Ca ii H data but not in the Fe i data. This can be interpreted as a signature of downflows in chromosphere.
The downflow speed is estimated at ~ 8 km/s, which is consistent with the typical picture of emerging-flux regions. This result demonstrates a new possibility of studying chromospheric flows by time-distance analysis.

準汎用並列計算機GRAPE-DR用制御プロセッサの開発および性能評価

【日時】11月28日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】準汎用並列計算機GRAPE-DR用制御プロセッサの開発および性能評価
【発表者(敬称略)】小池 邦昭(総研大D2 ・三鷹、指導教員 牧野 淳一郎)
 自己重力多体問題は球状星団や銀河などをモデル化する方法として有力な手段である。重力相互作用は無限大の到達距離をもっているためにすべての質点にかかる重力を計算する必要がある。この相互作用の計算量は粒子数の2 乗に比例するために多大な時間を要していた。このような問題を解決するため、重力の計算のみを高速に計算できる専用計算機GRAPE-1が開発された(Sugimoto.et.al,1990)。
 このGRAPE-1から6までのGRAPE型の計算機の特長はパイプライン構造の専用回路を多数並列化することで高性能化を実現している。それに対して現在開発中のGRAPEDRはプログラム可能な512個の小規模な演算器を1個の演算プロセッサに集積する方法を
とっている(Makino,2005)。このためGRAPE-DRは演算プロセッサを制御するための制御回路が別途必要になる。本研究ではこの制御プロセッサの実装を行い、重力相互作用の計算を実機で行い性能評価を行った。現時点では重力相互作用では1ボードあたり420Gflops の処理性能が実現されている。最適化は今後の課題である。
 またGRAPE-DR では演算器のプログラムを変更して密行列の計算を高速化することにより大規模な連立1次方程式を解くことが可能になっている。
密行列用に最適化された制御回路を用いて、並列LU分解用ソフトウェアであるHigh Performance Linpack(Petiet.et.al,2004)を高速化した。
 発表では重力相互作用およびLU 分解の高速化に関する性能評価結果について発表し、今後の展望について述べる。

銀河系棒状構造の運動学的検証に向けて

【日時】11月21日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】銀河系棒状構造の運動学的検証に向けて
【発表者(敬称略)】松本 尚子(総研大 ・三鷹D1、指導教員 本間 希樹)
銀河系のバルジおよび中心領域に関して、過去の可視光や近赤外の測光観測より、銀経方向に偏りのある輝度分布をしていることが知られており、三軸不等の棒状構造の存在が支持されている。その軸比は1:0.6:0.4 (Binney et al. 1997) などといわれている。また、棒状構造の長軸の向きは太陽から銀河中心方向に対して、20 °±10 °程度の傾き(cf. Binney et al. 1997; Dwek 1995) を持っているといわれている。これらの観測から、棒状構造の大体の傾向は捉えられているといえるが、不確定性は大きい。別のアプローチとして、銀河系中心およびバルジ領域中の晩期型星に付随するSiO メーザーのサーベイ観測が野辺山45m 電波望遠鏡によって多数行われている(cf. Izumiura et al. 1999; Deguchi et al. 2000,2004)。そして、SiO メーザー源の視線速度から、これらの天体が3kpc arm などをトレースしている可能性が示されている。他にも、OGLE-II やHST をはじめとする可視光や近赤外線望遠鏡によって、数年から数十年かけて星の天球面上の相対固有運動が測定されているが、領域や観測精度の制限が大きく、また、相対的な運動しか求められていない。したがって、銀河系棒状構造の運動学的な検証がすでに十分行われているとはいえない。
今回の発表では、銀河系棒状構造の運動学的検証のために我々が計画しているメーザー源を用いたVLBI 観測による絶対三次元固有運動測定の可能性と、現在の進捗状況・今後の展望について報告する。