金属欠乏星スペクトルの徹底解析 -修論予告編-

【日時】10月21日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】金属欠乏星スペクトルの徹底解析 -修論予告編-
【発表者(敬称略)】伊藤紘子 (総研大 M2・三鷹、指導教員 青木和光)
ビッグバン直後の宇宙には水素やヘリウムなどの軽元素しか存在しなかったが、その後生まれた星々によってさまざまな重元素が作られ、時間とともに重元素量が増えて現在のような宇宙が形成された。
この進化過程は「宇宙の化学進化」と呼ばれるが、特に宇宙初期でどのように進化が進んだのか、また、そのきっかけとなる宇宙の第一世代星がどのような星だったのかはまだ明らかにされていない。
このような問題にアプローチする手段として、我々は「金属欠乏星」の化学組成を調べて手がかりを得ようとしている。
金属欠乏星とはその名のとおり、太陽に比べて金属量(鉄の量を指標とする)が極端に少ない星である。まだ重元素が少なかった宇宙初期に誕生し、現在も大気中に宇宙初期の化学組成を保持していると考えられる。
我々はすばる望遠鏡の可視高分散分光器HDS を用いて、[Fe/H]=-3.7(鉄が太陽の5千分の一しかない)の9等星BD+44$^\circ$493を見出し、炭素過剰の原因として第一世代星の超新星爆発が最も有力であること、ベリリウム組成が非常に低いこと、などを明らかにした。(Ito et al. 2009, ApJL, 698, L37)
今後、この星のスペクトルのさらに徹底した解析を行い、修士論文にまとめる予定である。今回のコロキウムでは、その予告編として、これから取り組む課題について説明する。