相互作用銀河の観測的研究 ~アンテナ銀河の$^{13}$COマッピング観測~

【日時】5月27日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】相互作用銀河の観測的研究 ~アンテナ銀河の$^{13}$COマッピング観測~
【発表者(敬称略)】金子 紘之 (総研大 D2・野辺山、指導教員 久野 成夫)
複数の銀河が近づきあった際に生じる近接重力相互作用は、各銀河の恒星やガスの分布及び運動を大きくかき乱す役割をもつ。
更に、これら相互作用している銀河(相互作用銀河)は楕円銀河や高輝度赤外線銀河の形成といった銀河の進化、爆発的星形成やAGNに代表される銀河の活動性と密接な関連がある。
また、初期宇宙に於ける銀河自体の形成にも大きく影響を与えることが明らかになりつつあり相互作用銀河は銀河研究にとって重要な研究対象である。
相互作用銀河の持つ最も特徴的な性質の一つに、通常の銀河に比べ赤外領域やH$\alpha$線での超過、即ち活発な星形成活動が行われる点を挙げることができる(e.g., Soifer {\it et al.}, 1984)。
一方で、何故このような活発な星形成活動が引き起こされるかは未だ解明されていない。
相互作用銀河は比較的遠方宇宙に多く、空間分解能、感度の制限があり、観測的理解が難しいためである。
そもそも、星形成とは分子ガスを原料として行われる現象として捉える事が出来る。
従って、近傍の相互作用銀河の分子ガスを詳細に観測することで相互作用が分子ガスに与える影響を明らかにし、相互作用による爆発的星形成のトリガーの理解が可能となる。
これまでの研究から、(衝突・合体後ではなく)相互作用中期の時点で劇的な星形成活動(スターバースト)の生じている天体が複数例報告されている(e.g., Zhu, 1999)。
中でもアンテナ銀河(NGC4038/39)は近傍(22Mpc)にあり、銀河間で非常に活発な星形成が行われている相互作用銀河として知られている。
この天体では精力的に多波長観測が行われており、$^{12}$COを中心に分子ガス観測も進められている(e.g., Wilson {\it et al.}, 2003)。
本発表では、これまでの研究を概観しながらNRO45mを用いて行われた$^{13}$CO({\it J}=1-0)輝線マッピング観測の結果を報告する。