年別アーカイブ: 2008年

多様体補正法を用いた衛星の軌道数値積分法

【日時】5月7日(水) 10:30-12:00
【タイトル】 多様体補正法を用いた衛星の軌道数値積分法
【発表者(敬称略)】 梅谷 真史 (総研大 D3・三鷹、指導教員 福島 登志夫)
衛星の軌道を高精度かつ高速に求める数値積分法の研究を行った。この研究では多様体補正法と呼ばれる方法を用いた。多様体補正法は Nacozy(1971) により考案された手法であり、近年 Fukushima(2003) によって改良された方法である。その原理は系の持つ物理的な保存量 (もしくは変化が微小である準保存量) を基準に数値解を補正することである。
Fukushima による多様体補正法では摂動二体問題の形で記述される運動方程式において、二体問題の保存量が摂動により時間変化する (準保存量となる)、この値から解を補正した。しかし、衛星及び人工衛星の運動では、いわゆる J2 項 (地球重力場の軸対称性からの
差による摂動) による摂動が大きく Fukushima による多様体補正法では充分な結果が得られていない。
我々は摂動を形式的に分類し全エネルギーやいわゆる Jacobi 積分と呼ばれる量を準保存量として導入した。さらに解の補正法に Ma et al.(2008) による速度スケール変換を用いた。発表では詳しい手法と数値実験による結果、そして今度の発展について報告する予定である。

IRTF Observation Proposal:Star-formation and the origin of SMBH-growth in nearby QSOs

【日時】4月30日(月) 10:30-12:00
【タイトル】IRTF Observation Proposal:Star-formation and the origin of SMBH-growth in nearby QSOs
【発表者(敬称略)】彭之翰 (総研大 M1・三鷹、指導教員 今西 昌俊)
活動銀河中心核 (AGN) は、太陽の数 100 万倍以上の質量を持った超巨大ブラックホール (SMBH) への 質量降着をエネルギー
源として輝いている天体である。最近の観測結果から、SMBHsの降着率とスフェロイド成分(楕円銀河、バルジ成分) の星形成の相関を発見した。
AGN では、中心核の SMBH 活動による放射が支配的であるが、上記の事実は、その周囲に星生成が生じ、AGN に影響を与えると同時に、AGN からの影響も
受けていると考えられる。しかしながら、AGN の中心核の明るい放射のために、周囲に存在しているかも知れない星形成を観測するのが、極めて困難であった。
この問題を解決するために、我々は、銀河の星間空間に広く分布している PAH(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon; 芳香属炭化水素)の輝線を用いる。
PAH分子は、AGNの近傍では、AGN からの X 線に破壊されるため、AGNでは、PAH輝線は観測されない。それに対し、星形成領域では、星からの遠紫外線に
よって、PAH 分子が破壊されずに励起されるため、PAH 輝線が観測される。
従って、PAH 輝線は、星形成活動の優れた指標となる。PAH 放射は元々非常に強いため、弱い星生成活動をも検出できる。また、短波長の紫外線や可視光線に比べて、ダスト吸収の影響が小さく、星生成の規模を、PAH 輝線の観測フラックスから定量的に見積もることができる。
我々は、米国ハワイ島マウナケア山頂の米国 IRTF 3m 望遠鏡のSpeX赤外線分光器を用いて、赤外線の波長 3.45μm(L バンド) で、クエーサー(吸収を受けていない明るいAGN)を分光観測する。そして、静止波長3.3μmのPAH輝線の観測フラックスから星生成の規模を定量的に見積もり、中心AGNの光度との相関、及び、質量降着の激しさとの関系を調べる。

学長懇談会

080229a.jpg
 2008年2月29日、 3月に退官を迎える総研大学長 小平桂一先生をお招きして、すばる棟二階TV会議室において、懇談会を行いました。三鷹地区からは総研大生11名、東大生1名をはじめ、テレビ会議を使ってハワイから2名、野辺山から1名の学生が参加しました。

続きを読む