【日時】4月14日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】大井渚(総研大 D2・三鷹、指導教員 : 今西昌俊)
【タイトル】近傍ULIRGのブラックホール質量
超高光度赤外線銀河(ULIRG)はクエーサーに匹敵するほどのエネルギー(10^12Lsun)を赤外線で放射していて、銀河の衝突・合体の末期に選択的に発見されている。クエーサーの中心にあるブラックホールは普通の銀河中心のブラックホールよりも一桁重く(MBH>10^8Msun)、この質量のブラックホールは、ガスに富む普通の銀河(MBH~10^7Msun)の合体で形成できるというシミュレーション結果がある。
これらのことから、ULIRGはクエーサーに進化するという可能性が示唆されているが両者は進化関係にないと主張する結果も出ており、状況は混沌としている。我々はULIRGのブラックホール質量をクエーサのと比較することで、この問題に観測的な制限をつけることを目指している。ブラックホール質量と相関があり、進化段階に鈍感な銀河の有効半径を、減光の影響が小さい近赤外線Kバンドから求め、ガスに隠されているULIRGのブラックホール質量を見積もる。本発表では南アフリカにあるIRSF望遠鏡を用いた深撮像データの解析結果を報告する。解析が終わった天体についてブラックホールを見積もったところ、半分以上の天体でクエーサーに匹敵する質量のブラックホールをもっている可能性があることが分かった。
またIRSF望遠鏡は近赤外線J, H, Kバンドを同時に観測できるため、バンドごとの有効半径の違いについても議論する。
「コロキウム」カテゴリーアーカイブ
Studies on Blue Straggler Stars in different stellar environments
【日時】2月10日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】Studies on Blue Straggler Stars in different stellar environments
【発表者(敬称略)】趙正実 (総研大 D1・三鷹、指導教員 有本信雄)
Blue straggler stars (BSS) are located above and blue-ward of MS turn-off in a CMD of stellar clusters. They have been found in many stellar environments in observational studies during past 50 years.
Two different mechanisms of them are commonly believed nowadays: mass transfer in binary systems and stellar merger occurred through a direct stellar collision. The former might be dominant in lower density environments, whereas the later might be considered to mainly occur in high-density environments.
The most studies on these objects are focus on the globular clusters because the dynamical environment of them could produce both of BSS formed by different mechanisms. In recent years researches for BSS in dwarf spheroidal galaxies (dSphs) are also increased.
Interestingly there is found a statistically significant anti correlation between the relative BSS frequency respect to HB stars and absolute magnitude in dwarf galaxies, it is similar to that observed in globular clusters.
In this presentation, the previous studies on BSS, involving with observational properties- binarity, rotation velocity, abundance, radial distribution in different environments etc., will be introduced.
However, these properties were not enough to distinguish different formation mechanisms.
It is clear that a great deal of work remains to be done both observationally and theoretically on characteristics and physical mechanisms of BS.
系外惑星軌道の起源
【日時】2月3日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】系外惑星軌道の起源
【発表者(敬称略)】高橋安大(総研大 D2・三鷹、指導教員 田村元秀)
初めて1995年にMayor & Quelozによってペガスス座51番星に惑星系が発見されてから今年で15年となる。
その後主に視線速度法やトランジット法と呼ばれる主星からの光を観測する間接観測法を用いて発見された惑星数は400個を超え、統計的議論が可能になろうかとしている。
しかしながら、これまでに発見された惑星系は観測バイアスも相俟って、従来太陽系を基に考えられてきた惑星形成理論から予測される姿とは大きく異なり、軌道長半径は非常に小さく(0.0520$AUという主星から遠く離れた惑星たちは、その形成時間の問題からこれまで最有力候補と言われたコア集積モデルよりも重力不安定モデルを支持するのではないかと言われ、ますます惑星形成理論を混沌へと叩き込む結果となった。
このようにとりわけ惑星を特徴づける重要な要素である公転軌道は現在の観測からも比較的よく求まる物理量であることから研究の対象とされている。
本発表ではこれまでに提唱されている惑星形成理論を概観した後、間接観測の手法と結果をおさらいし、これまでに有力とされている惑星軌道移動モデルを紹介する。
その後、新しい惑星探査手法である直接撮像について述べ、具体例としてThalmann et al. 2009の論文を紹介する。
そして、直接撮像によって新しく考案された軌道移動モデルのうちのひとつとしてCrida et al. 2009を、最後にこれまでの形成モデルの困難を解決しうる、最も新しい星惑星形成モデルとして考えられたInutsuka et al. 2009を紹介する。
超低質量天体の起源解明へ向けて
【日時】2月3日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】超低質量天体の起源解明へ向けて
【発表者(敬称略)】末永 拓也 (総研大 D2・三鷹、指導教員 林正彦)
初期質量関数(IMF)の起源の解明は星形成を考える上で非常に重要な課題である。
例えば太陽近傍のfield starに関してはSalpeter(1955)以来、多くの研究がなされ低質量側では0.08太陽質量までは良く分かっている。
しかし、さらに低質量側の褐色矮星質量や惑星質量となるとそのIMFは未だに良く分かっていない。
このことは、そのような天体は1995年以降に発見されたため研究の歴史が浅い、可視で非常に暗い天体なので観測が難しい、といったことに起因する。
近年、赤外観測技術の発達に伴い、そのような超低質量天体のIMFを決めるために若い星形成領域の観測が盛んに行われている。
超低質量天体は年齢とともに暗くなっていくが、年齢が若いような領域ではまだ比較的に明るく観測することが可能だからである。その結果、褐色矮星質量や惑星質量のIMFが従来予想されていた星のIMFから逸脱した様子を見せていることが分かった。
これは、超低質量天体特有の形成メカニズムが存在することを示唆している。
超低質量天体形成メカニズムは現在まで十分には理解されておらず、IMFを決めてやることで制限をかけることができると期待される。
このような観測には、深い測光観測とそのfollow-upのための分光観測が不可欠である。
というのは測光観測だけでは銀河との分離や、membershipを議論することが難しいためである。
分光観測では得られたスペクトルの特徴からこれらを議論することが可能となる。
本研究では、若い星形成領域であるトラペジウムのouter partに対してSubaru/MOIRCSによる多天体分光観測を行った。
観測天体は、同領域の測光観測であるLucas,Roche& Tamura(2005)から主に選出している。
今回は、以上の様な観測のバックグラウンドを中心に、これから研究していくにあたっての展望を述べる。
M型矮星のインド・GMRTでの観測結果について 2
【日時】1月27日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】M型矮星のインド・GMRTでの観測結果について 2
【発表者(敬称略)】小池 一隆 (総研大 D2・三鷹、指導教員 出口 修至)
低温矮星(cool dwarfs)は、恒星の中でも特に表面温度の低い矮星(<~3900 K、M,L,T dwarfs)です。
低温矮星に関する詳しい研究は、始められてまだ10年ほどしか経っておらず、低温矮星の磁場活動をよく反映しているとされる電波領域の研究については、近年ようやく観測が行われるようになり、議論されはじめたところです。
恒星からの電波は、これまでに10個程のM、L型星に対して4.8GHzや8.4GHzで検出されています。これら電波の放射機構としては、当初、その周波数や強度から gyrosynchrotron 放射であると考えられていましたが、その後、100%に近い円偏光度を持った電波放射が観測されると、新たに electron-cyclotron maser 放射という考えが登場し、また、そういった変動が見られない電波放射も観測されるなど、現在のところ、まだ良く分かっていません。
そこで私たちは、他の低温矮星についても電波観測を行い、いずれの放射機構が多数を占めるのか、また新たな特徴を持った電波放射が見られないか、調査することにしました。
本発表では、前回の発表に引き続き、私たちが昨年6月にインドのGiant Metrewave Radio Telescope (GMRT)を用いて行ったM型矮星の電波観測についてご報告します。
この観測では、近くにM型矮星が見られる電波源(FIRST天体、1.4GHz)8天体と、以前私たちが行った観測から、同じくM型矮星に近く、低周波数(74MHz、230MHz)で明るい電波源1天体について、3周波数(1400、610、230MHz)の電波観測を行いました。