【日時】6月8日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】秦 和弘(総研大 D3・三鷹、指導教員 : 川口 則幸)
【タイトル】活動銀河ジェットM87における超高エネルギーγ線フレア領域のVLBI観測
アブストラクト
活動銀河中心核(AGN)に付随する相対論的ジェットではしばしば電波~X線に渡り強い非熱的放射が観測される。このうち幾つかのAGNジェットではテラ電子ボルト(TeV)に至る超高エネルギー(Very-High-Energy:VHE)γ線が観測されており、相対論的ジェットが卓越した粒子加速の現場となっていることを示唆している。
しかしながらジェットのどこで、如何にしてこれらの現象がもたらされるのか、その詳細は未だ明らかでなく、宇宙物理学における重要課題の1つとして残されている。
この問題に切り込む有力なアプローチは、VHE観測と同期して高分解能VLBI観測を行うことである。
おとめ座銀河団の中心部に位置する電波銀河M87は最近傍のVHEγ線源である。
その近さゆえジェットが他のγ線AGNに比べ圧倒的な空間スケールで分解されており、γ線放射の起源を紐解く上で鍵となる天体である。
これまで2005年、2008年に大規模なVHEフレアが観測されており、フレアに同期して行われたVLBI観測はγ線放射領域の特定および物理状態に極めて重要な制限を与えている。
2010年4月、M87で再び大規模なVHEγ線フレアが報告された。
我々はこのフレアとほぼ完全に同期してVLBAによる高分解能観測に成功した。
そこで今回は2010年VHEフレア時のVLBIスケールの様子について報告し、本観測から示唆されるフレアの発生場所、物理状態等について議論する。