オリオン大星雲における浮遊惑星質量天体の近赤外分光観測

【日時】11月10日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】末永 拓也(総研大 M2・三鷹、指導教員 : 田村 元秀)
【タイトル】オリオン大星雲における浮遊惑星質量天体の近赤外分光観測
惑星と同程度の質量にもかかわらず、恒星の周りを公転するのではなく孤立して存在している天体、それが浮遊惑星質量天体である。
このような軽い天体は温度が低いため非常に暗い上に、内部で水素燃焼を起こすことができず年齢と共にさらに暗くなってしまう。
そのため浮遊惑星質量天体が比較的明るいような、若い星形成領域を観測することが最適である。
実際、カメレオン座分子雲で初めて浮遊惑星質量天体が発見され以来様々な星形成領域で観測が行われてきている(Tamura et al.1998, Oasa et al.1999)。
しかし、そのような領域では母体となる分子雲によって減光が生じるため、超低質量天体がどのくらい存在するのかという質量関数や、それらがどのようにして生まれたのかという成因は明らかになっていない。
今回我々が観測対象としたオリオン大星雲は活発な星形成領域(距離~400pc、年齢~1Myr)であり、いくつかの浮遊惑星質量天体の存在が確認されている(Lucas et al. 2006,Weights et al.2009)。
浮遊惑星質量天体の有効温度や星団に対するMembershipを議論するためには撮像観測に加えて分光観測が必要不可欠である。
しかし、浮遊惑星質量天体は非常に暗いため、従来のロングスリット観測では観測効率が悪く、天体数が限られていた。
そこで我々はすばる望遠鏡に搭載された多天体近赤外撮像分光装置MOIRCSを用いて同領域の超低質量天体候補に対して同時分光観測を行った。その結果、新たに10天体に対する分光観測データを取得することが出来た。
本講演では、これらの超低質量天体の近赤外線スペクトルを示すとともにそれに基づく分類とその物理パラメータに関する議論を行う。
また、他の近傍星形成領域における浮遊惑星質量天体探査との比較も行う。