【日時】7月2日(水) 10:30-12:00
【タイトル】低温矮星の電波観測について
【発表者(敬称略)】小池 一隆(総研大 D1・野辺山、指導教員 出口 修至)
低温矮星(cool dwarfs) は、恒星の中でも特に表面温度の低い矮星( ≦ 3900 K、M,L,Tdwarfs) です。低温矮星に関する詳しい研究は、始められてまだ10 年ほどしか経っておらず、低温矮星の磁場活動をよく反映しているとされる電波領域での研究については、最近になってようやく観測が行われるようになり、議論されはじめたところです。
低温矮星については、先行研究から彩層のH α放射やコロナの X 線放射の強度が急激に減少することが知られています。
これは低温のため光球や大気における電離領域が減少し、それらとカップルした磁気エネルギーの散逸が抑えられ、プラズマ加熱が減るためと考えられています。しかし、これは磁場強度の減少を意味するものではないため、低温矮星からの極めてエネルギーの大きなフレアが、光学、UV、X 線の観測によって確認されており、これは磁気リコネクションが起きていることの証拠とされています。そして、電波観測においても、数個のM,L 型矮星から、フレアによる非熱的な電波放射(サイクロトロンメーザー放射) と考えられるものが検出されており、今後、さらに多くの低温矮星においてこのようなサイクロトロンメーザー放射を検出することが、低温矮星における一般的な磁場活動を調査する手段としてとても大切であると考えられています。
そこで、今回私たちは新たな低温矮星からのサイクロトロンメーザー放射の検出を目指した観測を行いましたので、本発表では低温矮星に関する先行研究を紹介するとともに、その観測結果についてお話します。