月別アーカイブ: 2009年11月

超新星背景ニュートリノの検出率予測における星形成率およびニュートリノ温度依存性の検討

【日時】11月25日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】超新星背景ニュートリノの検出率予測における星形成率およびニュートリノ温度依存性の検討
【発表者(敬称略)】鈴木 重太朗(総研大 D2・三鷹、指導教員:梶野 敏貴)
 近年中に大型の水チェレンコフ観測装置が稼働を開始する予定であるが、観測装置の大型化に伴う測定効率の向上は、超新星背景ニュートリノ(以下SRN)の観測に一層の進歩をもたらすものと期待される。
 重力崩壊型超新星の爆発の際には、そのエネルギーの99%をニュートリノが持ち去ると考えられており、その名残とも言えるSRNは、天の川銀河や宇宙論的距離にある系外銀河の時間進化に関する情報を蓄積していると考えられる物質の一つである。
 SRNに関するこれまでの理論的研究は、専ら大質量星の形成率を辿ることに焦点を当てており、それは近年の観測的宇宙論において、第1世代天体の形成過程を知るために着目されているものである。
 しかし、SRNのエネルギースペクトル推定の根拠には幾つかの不定性が含まれており、これらの不定性は、大質量星の形成率が高い精度で見積もられても減ずることができないと考えられる。そのうちの一つは、重力崩壊型超新星におけるフレーバー毎のニュートリノ温度が分かっていないことである。
 今回の発表では、大質量星の形成率に関する最近の観測データを踏まえたうえで、超新星爆発におけるr-過程等に関する数値計算の結果及び軽元素における銀河化学進化(以下GCE)の観測結果等を用いて、理論的計算における上記の不定性を減ずる方法と、これを用いて算出した結果、および今後の研究方針について述べる。

星形成領域におけるAKARI赤外線観測(3)

【日時】11月18日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】星形成領域におけるAKARI赤外線観測(3)
【発表者(敬称略)】佐藤 八重子 (総研大 D2・野辺山、指導教員 田村 元秀)
2006年に打ち上げられたAKARI衛星では、多数の星形成領域の観測を行なってきた。我々は、赤外線カメラIRCを用いて、約200視野の星形成領域の観測を行ない、その解析を進めている。これらの中から、星形成過程における個々の星周構造を研究していくために、星のクラスターがあり、重い星を含まない領域について、統計的な議論を行なって行く予定である。
O型星のような重い星を含まない中質量星形成領域では、原始星の進化は比較的遅いため、また大質量星による影響がないため、星周構造が残りやすいと考えられる。
今回は、このうち星形成領域GGD12-15についての新たな解析結果とSerpens領域についての比較を議論する。
GGD12-15領域は約1kpcにある中質量星形成領域で、HⅡ領域や水メーザー、COアウトフロー、多数の近赤外線源や電波源の存在が確認されている星形成活動が活発な領域である。
Serpensは260pcという近距離にある低質量星形成領域として知られる有名な星形成サイトで、class0/I天体を含むような若いクラスターが存在しており、多くの研究がなされてきた。
近赤外線(3,4micron)・中間赤外線(7,11micron)のデータを用いて、星形成領域GGD12ー15において解析を行なった。
この天体は、これまでにIRSF/SIRIUSでの観測・解析を行ない、議論してきた。その結果もふまえ、2色図やSEDなどから得られる星周構造の有無についてやこの領域に属する若い天体について分類・議論していく。

M型矮星のインド・GMRTでの観測結果について

【日時】11月11日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】M型矮星のインド・GMRTでの観測結果について
【発表者(敬称略)】小池 一隆 (総研大 D2・野辺山、指導教員 出口 修至)
 低温矮星(cool dwarfs) は、恒星の中でも特に表面温度の低い矮星( < 3900 K、M,L,T dwarfs) です。低温矮星に関する詳しい研究は、始められてまだ10 年ほどしか経っておらず、低温矮星の磁場活動をよく反映しているとされる電波領域の研究については、近年ようやく観測が行われるようになり、議論されはじめたところです。  恒星からの電波は、これまでに10 個程のM、L型星に対して4.8GHzや8.4GHz で検出されています。これら電波の放射機構としては、当初、その周波数や強度からgyrosynchrotron放射であると考えられていましたが、その後、100 %に近い円偏光度を持った電波放射が観測されると、新たにelectron-cyclotron maser 放射という考えが登場し、また、そういった変動が見られない電波放射も観測されるなど、現在のところ、まだ良く分かっていません。  そこで私たちは、他の低温矮星についても電波観測を行い、いずれの放射機構が多数を占めるのか、また新たな特徴を持った電波放射が見られないか、調査することにしました。  本発表では、今年の6月にインドのGiant Metrewave Radio Telescope(GMRT) を用いて、M型矮星の電波観測を行いましたので、そのことについて報告します。この観測では、近くにM型矮星が見られる電波源(FIRST 天体、1.4GHz)8 天体と、以前私たちが行った観測から、同じくM型矮星に近く、低周波数(74MHz、230NHz) で明るい電波源1天体について、3 周波数(1400、610、230MHz) の電波観測を行いました。