【日時】9月3日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】重力レンズで探る銀河団質量光度比の研究
【発表者(敬称略)】内海 洋輔(総研大 M2・三鷹、指導教員 宮崎 聡)
階層的構造形成モデルによれば、多数の銀河が重力で引きつけ合って銀河団が形成されるので、銀河の集合体である銀河団の質量光度比が大きくばらつくことは期待されない。従来の銀河団のメンバーの速度分散を使った質量の推定からは銀河団物理状態を仮定する必要があったために質量光度比のバラツキを議論するのは困難であった。
一方で、銀河団による弱重力レンズ効果を使えば、銀河団の物理状態を仮定することなく質量を推定することができる。ところが、弱重力レンズ効果を使った銀河団質量光度比の測定を行っても、依然銀河団質量光度比が100~1000(Msun/Lsun)程度と大きくばらついて報告されている。
これは、異なる観測システムで決められたり、定義が異なっていたりするために質量光度比の測定値同士の比較が容易ではないためである。したがってこのばらつきが銀河団固有のものであるか、系統的なものであるかを結論づけるのが難しいのが現状である。
これをアーカイブデータで統一的に調べることにした。2001年4月から現在までに公開されている、すばる/Suprime-Camのアーカイブデータを整理し、観測条件の良いものを調べたところ、0.1
「コロキウム」カテゴリーアーカイブ
シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星からもたらされる流星雨の可能性とこれから
【日時】7月9日(水) 10:30-12:00
【タイトル】シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星からもたらされる流星雨の可能性とこれから
【発表者(敬称略)】堀井 俊(総研大D1 ・三鷹、指導教員 渡部 潤一)
流星群は、地球が彗星から放出された濃いダストのトレイルを横切るときに出現する。
シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(73P/Schwassmann-Wachmann)の核は、少なくとも過去2回の回帰で多くの破片に分裂してきており、今までに50個以上の分裂核が検出されている。それに関連した濃いダストのトレイルが、スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外観測で検出されているので、将来、これらが流星群の活発な活動を引き起こすことが大いに期待される。
実際、過去の事例を探ってみると、1842/1843年に分裂したビエラ彗星(3P/Biela)が、後にアンドロメダ座流星群(Andromedids)として、1時間あたり数万個という流星雨をもたらしたという記録が残っている。
そこで、我々はこのシュバスマン・ヴァハマン第3彗星に対して、いわゆるダスト・トレイル理論を適用し、この彗星がもたらす流星群が将来あるかどうか、その可能性を調べてみた。その結果、将来、いくつかのダストのトレイルが地球に非常に接近し、流星群の活発な活動の可能性があるということが分かった。
今回の発表では、この研究の途中経過と今後の展望について発表する。
低温矮星の電波観測について
【日時】7月2日(水) 10:30-12:00
【タイトル】低温矮星の電波観測について
【発表者(敬称略)】小池 一隆(総研大 D1・野辺山、指導教員 出口 修至)
低温矮星(cool dwarfs) は、恒星の中でも特に表面温度の低い矮星( ≦ 3900 K、M,L,Tdwarfs) です。低温矮星に関する詳しい研究は、始められてまだ10 年ほどしか経っておらず、低温矮星の磁場活動をよく反映しているとされる電波領域での研究については、最近になってようやく観測が行われるようになり、議論されはじめたところです。
低温矮星については、先行研究から彩層のH α放射やコロナの X 線放射の強度が急激に減少することが知られています。
これは低温のため光球や大気における電離領域が減少し、それらとカップルした磁気エネルギーの散逸が抑えられ、プラズマ加熱が減るためと考えられています。しかし、これは磁場強度の減少を意味するものではないため、低温矮星からの極めてエネルギーの大きなフレアが、光学、UV、X 線の観測によって確認されており、これは磁気リコネクションが起きていることの証拠とされています。そして、電波観測においても、数個のM,L 型矮星から、フレアによる非熱的な電波放射(サイクロトロンメーザー放射) と考えられるものが検出されており、今後、さらに多くの低温矮星においてこのようなサイクロトロンメーザー放射を検出することが、低温矮星における一般的な磁場活動を調査する手段としてとても大切であると考えられています。
そこで、今回私たちは新たな低温矮星からのサイクロトロンメーザー放射の検出を目指した観測を行いましたので、本発表では低温矮星に関する先行研究を紹介するとともに、その観測結果についてお話します。
Identification of the exciting source of CO outflow in the star formation region GGD12-15
【日時】6月25日(水) 10:30-12:00
【タイトル】Identification of the exciting source of CO outflow in the star formation region GGD12-15
【発表者(敬称略)】佐藤 八重子(総研大 D1・三鷹、指導教員 田村元秀)
We present results of near-infrared imaging polarimetry of the GGD12-15 region with the IRSF 1.4 m telescope
and SIRIUS camera/SIRPOL polarimeter and mid-infrared imaging with the AKARI telescope and Infra-Red Camera (IRC).
Two infrared sources, IRS9E and IRS9M near an H2O maser source situated on both sides around a VLA source (VLA7), have been believed to be two bipolar lobes associated with a massive CO outflow.
However, our polarimetric observations have revealed that IRS9E is stellar-like and not part of reflection nebula.
Furthermore, IRS9M itself is not stellar but a bipolar nebula extending north-south. Both polarization vector maps and polarized intensity images show that the true illuminating source, IRS9Mc, is not resolved and situated near the peak of the intensity image. Our astrometry also indicates that the position of IRS9Mc does not coincide with the water maser position but rather coincides with the VLA7 position. We suggest that the unresolved illuminating source IRS9Mc is the true exciting source of the CO outflow, corresponding to a mid-infrared source detected by AKARI with a lower spatial resolution.
Fluxes of the newly identified source at 1 to 11 μm are derived by separating contributions from nearby infrared sources; the spectral energy distribution is consistent with that of a class I/0 source.
赤外線偏光観測による褐色矮星の円盤の探査
【日時】6月11日(水) 10:30-12:00
【タイトル】赤外線偏光観測による褐色矮星の円盤の探査
【発表者(敬称略)】橋本 淳(総研大 ・三鷹、指導教員 田村 元秀)
概要:星形成領域には多数の若い褐色矮星および惑星質量天体候補が存在することが知られている(Tamura et al. 1998;
Oasa et al. 1999; Lucas & Roche 2000; Muench et al. 2001)。
しかし、その形成過程にはまだ決着がついておらず、standard formation scenario (e.g. Jayawardhana et al. 2002)
とejection scenario (Reipurth & Clarke 2001)が提唱されている。前者は低質量星の形成過程のように分子雲コアの収縮により形成され、後者は星が形成されるごく初期の段階で他の星との相互作用により放り出されることを提案している。したがって、ejection scenarioでは星周円盤のはぎ取りが起こるため、若い褐色矮星の円盤を詳細に調べることでそれらの形成過程の解明に繋がると考えられる。
そこで本研究では、南アフリカにある1.4mIRSF望遠鏡に偏光撮像装置を取り付け、おうし座、へびつかい座、カメレオン座領域にある若い褐色矮星約20天体の近赤外線偏光観測を行なった。
観測対象の褐色矮星は、中間赤外線での赤外超過もしくはHα輝線の観測から星周円盤の存在が間接的に
確かめられている天体である。偏光観測によって円盤からの散乱光を直接検出することが期待される。
本講演では観測と解析の結果を報告し、褐色矮星の形成過程について議論する。