【日時】6月24日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】超新星背景ニュートリノの検出率予測におけるニュートリノ温度依存性の検討
【発表者(敬称略)】鈴木 重太朗(総研大 D2・三鷹、指導教員 梶野 敏貴)
水チェレンコフ観測装置の測定効率の向上は、超新星背景ニュートリノ(以下SRN)の観測に一層の進歩をもたらしたと言える。
重力崩壊型超新星の爆発の際には、そのエネルギーの99%をニュートリノが持ち去ると考えられており、その名残とも言えるSRNは、天の川銀河や宇宙論的距離にある系外銀河の時間進化に関する情報を蓄積していると考えられる物質の一つである。
SRNに関するこれまでの理論的研究は、専ら大質量星の形成率を辿ることに焦点を当てており、それは近年の観測的宇宙論において、第1世代天体の形成過程を知るために着目されているものである。
しかし、SRNのエネルギースペクトルには幾つかの不定性が含まれており、その不定性はSRN検出率の信頼性を揺るがせるほどのものである。
そのうちの一つは、重力崩壊型超新星におけるフレーバー毎のニュートリノ温度が分かっていないことである。
本研究では、大質量星の形成率に関する最近の観測データを踏まえたうえで、超新星爆発におけるr-過程及び系元素における銀河化学進化(以下GCE)の観測結果を用いて、理論的計算における上記の不安定性を取り除く方法と、これを用いて算出した結果について発表する。
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VLBI観測で探る銀河系棒状構造
【日時】6月17日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】VLBI観測で探る銀河系棒状構造
【発表者(敬称略)】松本尚子(総研大 D4・三鷹、指導教員 本間希樹)
銀河系の棒状構造について過去の様々な観測や理論モデルからその存在が示唆されている。
棒状構造の長軸の向きは太陽から銀河中心方向に対して、20 °程度の傾き(ex. Binney et al. 1997; Dwek 1995) を持っているといわれ、CO分子ガスのPV図とモデルを照らし合わせた研究(ex. Bissanz et al. 2003)などからはNuclear ringや3kpc armなどの構造が示されており、大体の傾向は捉えられている。
しかし、絶対位置や3次元運動ではまだ捉えられてはおらず、不確定性も大きい。特に、ガスの運動については、3次元的にガスの固有運動を直接議論できるような観測はなされていない。
そこで、この銀河系棒状構造を対象に、VERA・JVNを用いた超長基線電波干渉計による高精度アストロメトリ観測を計画した。
この観測により、棒状構造を構成していると考えられるメーザー源の絶対位置・絶対3次元運動を捉えることを目標とする。
メーザー源の中でも、6.7GHz帯メタノールメーザー源は大質量星形成に付随し、系内のガスの運動をとらえることができる魅力的なツールであり、3kpc arm付近の天体を見るのに、天体数・fluxなどの観測条件を十分に備えている。
5月に新6.7GHz受信機がVERA全局配備され、7月からは6.7GHz帯VLBI観測が本格始動可能となった。
銀河系の棒状構造を運動学的にとらえる本研究計画について、今回はSakamoto et al. 1999を用いたガスの非円運動成分の見積もりの結果をはじめ、新受信機の紹介、現在進行中のメタノールメーザー源の観測状況およびフリンジチェック観測の結果などについて報告し、絶対三次元固有運動計測の実現性について述べる。
星形成領域におけるAKARI赤外線観測(2)
【日時】6月10日(水) 11:00~12:30
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】星形成領域におけるAKARI赤外線観測(2)
【発表者(敬称略)】佐藤 八重子(総研大 D2・三鷹、指導教員 田村 元秀)
2006年に打ち上げられたAKARIは、赤外線での全天サーベイを目的とした赤外天文衛星である。AKARIには2つの装置が搭載されており、近赤外線から遠赤外線(1.7~180 micron)の広い波長域で撮像・分光観測が行なわれ、多くの成果を残してきた。
これまでに、我々は星形成グループのミッションとしてAKARIでの撮像観測を行なったが、その数は約200視野に及ぶ。これらの中から、星形成過程における個々の星周構造を研究していくために、今後は星のクラスターがあり、重い星を含まない領域について、統計的な議論を行なって行く予定である。O型星のような重い星を含まない中質量星形成領域では、原始星の進化は比較的遅いため、また大質量星による影響がないため、星周構造が残りやすいと考えられる。
今回は、近赤外線(3,4micron)・中間赤外線(7,11micron)のデータを用いて、星形成領域GGD12ー15において解析を行なった。この天体は、これまでにIRSF/SIRIUSでの観測・解析を行ない、議論してきた。その結果もふまえ、2色図やSEDなどから得られる星周構造の有無についてやこの領域に属する若い天体について分類・議論していく。
相互作用銀河の観測的研究 ~アンテナ銀河の$^{13}$COマッピング観測~
【日時】5月27日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】相互作用銀河の観測的研究 ~アンテナ銀河の$^{13}$COマッピング観測~
【発表者(敬称略)】金子 紘之 (総研大 D2・野辺山、指導教員 久野 成夫)
複数の銀河が近づきあった際に生じる近接重力相互作用は、各銀河の恒星やガスの分布及び運動を大きくかき乱す役割をもつ。
更に、これら相互作用している銀河(相互作用銀河)は楕円銀河や高輝度赤外線銀河の形成といった銀河の進化、爆発的星形成やAGNに代表される銀河の活動性と密接な関連がある。
また、初期宇宙に於ける銀河自体の形成にも大きく影響を与えることが明らかになりつつあり相互作用銀河は銀河研究にとって重要な研究対象である。
相互作用銀河の持つ最も特徴的な性質の一つに、通常の銀河に比べ赤外領域やH$\alpha$線での超過、即ち活発な星形成活動が行われる点を挙げることができる(e.g., Soifer {\it et al.}, 1984)。
一方で、何故このような活発な星形成活動が引き起こされるかは未だ解明されていない。
相互作用銀河は比較的遠方宇宙に多く、空間分解能、感度の制限があり、観測的理解が難しいためである。
そもそも、星形成とは分子ガスを原料として行われる現象として捉える事が出来る。
従って、近傍の相互作用銀河の分子ガスを詳細に観測することで相互作用が分子ガスに与える影響を明らかにし、相互作用による爆発的星形成のトリガーの理解が可能となる。
これまでの研究から、(衝突・合体後ではなく)相互作用中期の時点で劇的な星形成活動(スターバースト)の生じている天体が複数例報告されている(e.g., Zhu, 1999)。
中でもアンテナ銀河(NGC4038/39)は近傍(22Mpc)にあり、銀河間で非常に活発な星形成が行われている相互作用銀河として知られている。
この天体では精力的に多波長観測が行われており、$^{12}$COを中心に分子ガス観測も進められている(e.g., Wilson {\it et al.}, 2003)。
本発表では、これまでの研究を概観しながらNRO45mを用いて行われた$^{13}$CO({\it J}=1-0)輝線マッピング観測の結果を報告する。
大粒子数を扱える惑星形成過程向けハイブリッド N 体シミュレーションコードの開発
【日時】5月20日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】大粒子数を扱える惑星形成過程向けハイブリッド N 体シミュレーションコードの開発
【発表者(敬称略)】押野 翔一(総研大 D2 ・三鷹、指導教員 牧野淳一郎)
惑星形成の標準モデルは Safronov (1969) や Hayashi et al. (1985) で提案されたモデルが基になっている。その形成過程の中の微惑星衝突段階では、微惑星同士が衝突合体を繰り返すことで原始惑星に進化したと考えられている。この過程の研究には N 体計算が用いられており、暴走成長や寡占成長 (Kokubo & Ida 1998, 2000) といった形成過程が解明されている。
しかし、先行研究では粒子数が数万体、1 粒子当たりの質量が 10^23 g 程度のシミュレーションが行われておりこれより軽い微惑星の振る舞いについては良く分かっていない。また、扱える粒子数に制限があるため、殆ど全てのN 体計算は perfect accretionを仮定して行われてきた。
この仮定が、特に惑星成長の後期の過程で適切かどうかは明らかではない。
そこで本研究では粒子数を増やし高い質量分解能でのシミュレーションを行なえる計算コードを開発し、これらの未解決の問題を解決することを目標とする。
N 体計算は粒子数の 2 乗で計算量が増加する。また惑星形成の場合、微惑星の公転周期に比べ形成時間がはるかに長いため非常に長時間の積分が必要になる。
以上の理由により惑星形成過程向けの高速に計算できるコードが必要となる。
今回開発したコードでは大粒子数を扱うためにツリー法(Barnes & Hut 1986)を用いてN体計算の計算量をO(N log N)に減らしている。
また惑星形成の計算は衝突系のため近接遭遇を精度良く計算する必要がある。
そこでハイブリッド法 (Chambers 1999) を用いて近接遭遇した粒子間重力を取り出し、細かい時間刻みで積分することにより精度を保ちながら高速に計算する。
本発表では今回開発したコードのテスト計算の結果と今後の展望について述べる。