超低質量天体の起源解明へ向けて

【日時】2月3日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】超低質量天体の起源解明へ向けて
【発表者(敬称略)】末永 拓也 (総研大 D2・三鷹、指導教員 林正彦)
初期質量関数(IMF)の起源の解明は星形成を考える上で非常に重要な課題である。
例えば太陽近傍のfield starに関してはSalpeter(1955)以来、多くの研究がなされ低質量側では0.08太陽質量までは良く分かっている。
しかし、さらに低質量側の褐色矮星質量や惑星質量となるとそのIMFは未だに良く分かっていない。
このことは、そのような天体は1995年以降に発見されたため研究の歴史が浅い、可視で非常に暗い天体なので観測が難しい、といったことに起因する。
近年、赤外観測技術の発達に伴い、そのような超低質量天体のIMFを決めるために若い星形成領域の観測が盛んに行われている。
超低質量天体は年齢とともに暗くなっていくが、年齢が若いような領域ではまだ比較的に明るく観測することが可能だからである。その結果、褐色矮星質量や惑星質量のIMFが従来予想されていた星のIMFから逸脱した様子を見せていることが分かった。
これは、超低質量天体特有の形成メカニズムが存在することを示唆している。
超低質量天体形成メカニズムは現在まで十分には理解されておらず、IMFを決めてやることで制限をかけることができると期待される。
このような観測には、深い測光観測とそのfollow-upのための分光観測が不可欠である。
というのは測光観測だけでは銀河との分離や、membershipを議論することが難しいためである。
分光観測では得られたスペクトルの特徴からこれらを議論することが可能となる。
本研究では、若い星形成領域であるトラペジウムのouter partに対してSubaru/MOIRCSによる多天体分光観測を行った。
観測天体は、同領域の測光観測であるLucas,Roche& Tamura(2005)から主に選出している。
今回は、以上の様な観測のバックグラウンドを中心に、これから研究していくにあたっての展望を述べる。