はじめに
2009年12月23日から27日まで野辺山宇宙電波観測所において総研大の電波観測実習が実施された。この実習の目的は、電波観測に必要な基本計測器の計測原理・操作に習熟すること、電波天文観測で重要な観測装置の基本性能、観測内容について学習してその天文学的な意味について理解すること、実際の観測を行いデータ解析手法について学ぶこと、などがあげられる。参加者は、総研大物理科学研究科天文科学専攻の5年一貫博士課程1年生4名のほかに、総研大高エネルギー加速器科学研究科の学生1名、外国人留学生1名、外国人研修生2名や関連大学の学生・指導教官など計10名であった。総研大の教官は、下記名簿の4名が担当した。
Name | 氏名 | 所属 (指導教官) | 出身 |
---|---|---|---|
総研大教官 | |||
Nario Kuno | 久野成夫 | 国立天文台野辺山宇宙電波観測所 | |
Shuro Takano | 高野秀路 | 国立天文台野辺山宇宙電波観測所 | |
Noriyuki Kawaguchi | 川口則幸 | 国立天文台水沢VLBI観測所 | |
Hideo Hanada | 花田英夫 | 国立天文台月惑星探査検討室 | |
総研大実習生 | |||
Yoshifumi Ishizaki | 石崎剛史 | 柏川(遠方銀河、z>7) | 筑波大学中井研 |
Yasuhiro Takahashi | 高橋安大 | 田村(系外惑星) | 東京大学尾中研 |
Keisuke Imase | 今瀬佳介 | 今西(AGN広輝線) | 東京理科大学松下研 |
Takuya Suenaga | 末永拓也 | 田村(系外惑星) | 筑波大学中井研 |
Akie Shimizu | 清水景絵 | 羽澄(CMB) | 筑波大学素粒子理論 |
外国人留学(研修)生 | |||
James Chibueze | 鹿児島大学、面高(Massive SFR) | Abia, Nigeria | |
Bonaventure Okere | 野辺山、久野、出口(AGB Star) | Imo, Nigeria | |
Ikechukwu Obi | 野辺山、久野、出口(AGB Star) | Anambra, Nigeria | |
傍聴参加者 | |||
Satoru Mima | 美馬 覚 | 石野(宇宙背景放射の検出器開発)岡山大学 | |
Hirokazu Ishino | 石野宏和 | 岡山大学理学部物理学科、准教授 |
実習日程
12 月23 日(水) | 講義・講習(総研大生他) |
13:30 | 野辺山宇宙電波観測所集合, 宿泊等の受付 |
14:30-15:00 | 総研大観測実習ガイダンス日程(花田) |
15:00-16:00 | 電波へリオグラフ見学(浅井) |
16:30-17:30 | 水沢観測所の紹介(花田) |
12 月24 日 (木) | 講義・講習(総研大生他) |
09:00-10:30 | 基本計測器について(川口) |
10:45-12:15 | 電波観測概論(川辺) |
13:30-15:00 | 基本計測機操作実習(川口、花田) |
15:30-17:00 | 電波望遠鏡操作実習(久野、高野他) |
17:30- | 歓迎会 |
12月25日(金)-26日 | 観測実習(総研大生) チューター;久野、高野、+NROポスドク他 |
12 月27 日(日) | 観測成果報告会 |
9:30-11:00 | 観測結果の報告会(総研大生) |
11:00-12:00 | 観測に関する質疑応答(久野、川辺、高野他) |
13:00 | 解散 |
計測器操作実習
電波観測システムの調整に必要な基本計測器の計測原理や特長などを学んだあと、実際の操作実習を行った(写真1)。
電波望遠鏡の操作実習
基本計測機の操作実習の後は電波望遠鏡の見学・操作実習を行った。電波望遠鏡のエレベーション軸受けまで上り、アンテナ駆動系の説明を受けるとともに(写真2)、受信器室にて受信機の調整状況を見学した(写真3)。
クリスマス
12月24日の夜はクリスマスイブだったので、ささやかながらジュースとケーキで歓迎会を行った(写真4)。
銀河回転曲線の観測実習
CO 輝線のドプラ周波数偏移を計測して銀河の回転曲線を求め、銀河質量を推定する観測を行った。5つの銀河を5名の総研大生が2日間をかけて分担して観測した(写真5)。
観測結果報告会
最終日に観測結果の報告会が行われ、主として第一日目に観測した学生より、一次解析結果が示され、銀河の中心より次第に銀河の回転速度が増加していく様子が示された。また、観測誤差の評価や銀河質量の推定などを行う手法についての質疑応答がなされた。
最後に
実習期間中は天候に恵まれ、野辺山のこの時期では珍しくほとんど積雪が見られなかった。野辺山観測所の周辺には、気軽に徒歩で行ける近くにコンビニエンスストアもなく、日・祝日には食堂での食事の提供もなかったので、生活面では大変だったと思うが、何とか1週間の実習を行うことができた。今回の実習生は、光・赤外分野を専攻している学生が多く、電波での観測はなじみにくかったと思うが、今後なんらかの機会にこの実習経験が役立つことがあれば幸いである。