【日時】10月3日(金) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】輻射磁気流体シミュレーションによる連星系形成条件の研究
【発表者(敬称略)】富田 賢吾 (総研大M2 ・三鷹、指導教員 富阪 幸治)
星間媒体から分子コアを経て原始星へと至る星形成過程(特に低質量星形成)は古くからよく研究されている分野であるが、今なお未解決の問題が多数残されている。
特に、Initial Mass Function(IMF)を理論的に決定することは星形成研究の究極的目標の一つであるが、理論的・観測的に幾つかの示唆は得られているものの、未だ統一的な理解は得られていない。観測的には分子雲コアの質量関数(CMF)がIMFと似通っていることが指摘されており、解析的または数値的にCMFを再現する
研究もなされているが、”初期条件”であるCMFから”終状態”のIMFに至る過程は非常に複雑であり単純に対応付けることはできないという難しさがある。
Machida et al. 2008は分子コアが重力収縮する過程で分裂する条件を数値計算を用いて統計的に調べた研究である。このシミュレーションは(i)三次元(ii)大ダイナミックレンジを扱うための多重格子法(iii)自己重力(iv)磁場といった星形成で重要となる要素を含んでいるが、ガスの熱的進化を球対称一次元輻射流体計算の中心要素の進化から求めたポリトロープ関係で扱っている。この近似は中心部分については正しいが、外側では熱的進化を大きく誤ることがWhitehouse & Bate 2006で指摘されている。自己重力的なガスが
分裂する条件は系の温度分布に強く依存するため、熱的進化の取り扱いが系の動的進化に影響する可能性は極めて高く、ガスの熱的進化をより正確に取り扱う必要がある。
このためには(v)輻射輸送を取り扱う必要があり、近似的にではあるがこれを取り入れたシミュレーションコードの開発に現在取り組んでいる。
輻射流体シミュレーションはその計算コストの大きさからこれまであまり取り組まれてこなかったが、計算機の発達に伴って近年各地で積極的に研究が進められている。この様な問題に限らず輻射輸送は宇宙物理学における素過程として重要であり、これを取り入れることでコードの応用範囲はこれまでよりも大きく広がることが期待される。
本発表では星形成過程に残された問題とそれに対する我々のアプローチを説明し、コード開発の現状及び今後の展望について報告する。
「コロキウム」カテゴリーアーカイブ
重力レンズで探る銀河団質量光度比の研究
【日時】9月3日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】重力レンズで探る銀河団質量光度比の研究
【発表者(敬称略)】内海 洋輔(総研大 M2・三鷹、指導教員 宮崎 聡)
階層的構造形成モデルによれば、多数の銀河が重力で引きつけ合って銀河団が形成されるので、銀河の集合体である銀河団の質量光度比が大きくばらつくことは期待されない。従来の銀河団のメンバーの速度分散を使った質量の推定からは銀河団物理状態を仮定する必要があったために質量光度比のバラツキを議論するのは困難であった。
一方で、銀河団による弱重力レンズ効果を使えば、銀河団の物理状態を仮定することなく質量を推定することができる。ところが、弱重力レンズ効果を使った銀河団質量光度比の測定を行っても、依然銀河団質量光度比が100~1000(Msun/Lsun)程度と大きくばらついて報告されている。
これは、異なる観測システムで決められたり、定義が異なっていたりするために質量光度比の測定値同士の比較が容易ではないためである。したがってこのばらつきが銀河団固有のものであるか、系統的なものであるかを結論づけるのが難しいのが現状である。
これをアーカイブデータで統一的に調べることにした。2001年4月から現在までに公開されている、すばる/Suprime-Camのアーカイブデータを整理し、観測条件の良いものを調べたところ、0.1
シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星からもたらされる流星雨の可能性とこれから
【日時】7月9日(水) 10:30-12:00
【タイトル】シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星からもたらされる流星雨の可能性とこれから
【発表者(敬称略)】堀井 俊(総研大D1 ・三鷹、指導教員 渡部 潤一)
流星群は、地球が彗星から放出された濃いダストのトレイルを横切るときに出現する。
シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(73P/Schwassmann-Wachmann)の核は、少なくとも過去2回の回帰で多くの破片に分裂してきており、今までに50個以上の分裂核が検出されている。それに関連した濃いダストのトレイルが、スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外観測で検出されているので、将来、これらが流星群の活発な活動を引き起こすことが大いに期待される。
実際、過去の事例を探ってみると、1842/1843年に分裂したビエラ彗星(3P/Biela)が、後にアンドロメダ座流星群(Andromedids)として、1時間あたり数万個という流星雨をもたらしたという記録が残っている。
そこで、我々はこのシュバスマン・ヴァハマン第3彗星に対して、いわゆるダスト・トレイル理論を適用し、この彗星がもたらす流星群が将来あるかどうか、その可能性を調べてみた。その結果、将来、いくつかのダストのトレイルが地球に非常に接近し、流星群の活発な活動の可能性があるということが分かった。
今回の発表では、この研究の途中経過と今後の展望について発表する。
低温矮星の電波観測について
【日時】7月2日(水) 10:30-12:00
【タイトル】低温矮星の電波観測について
【発表者(敬称略)】小池 一隆(総研大 D1・野辺山、指導教員 出口 修至)
低温矮星(cool dwarfs) は、恒星の中でも特に表面温度の低い矮星( ≦ 3900 K、M,L,Tdwarfs) です。低温矮星に関する詳しい研究は、始められてまだ10 年ほどしか経っておらず、低温矮星の磁場活動をよく反映しているとされる電波領域での研究については、最近になってようやく観測が行われるようになり、議論されはじめたところです。
低温矮星については、先行研究から彩層のH α放射やコロナの X 線放射の強度が急激に減少することが知られています。
これは低温のため光球や大気における電離領域が減少し、それらとカップルした磁気エネルギーの散逸が抑えられ、プラズマ加熱が減るためと考えられています。しかし、これは磁場強度の減少を意味するものではないため、低温矮星からの極めてエネルギーの大きなフレアが、光学、UV、X 線の観測によって確認されており、これは磁気リコネクションが起きていることの証拠とされています。そして、電波観測においても、数個のM,L 型矮星から、フレアによる非熱的な電波放射(サイクロトロンメーザー放射) と考えられるものが検出されており、今後、さらに多くの低温矮星においてこのようなサイクロトロンメーザー放射を検出することが、低温矮星における一般的な磁場活動を調査する手段としてとても大切であると考えられています。
そこで、今回私たちは新たな低温矮星からのサイクロトロンメーザー放射の検出を目指した観測を行いましたので、本発表では低温矮星に関する先行研究を紹介するとともに、その観測結果についてお話します。
Identification of the exciting source of CO outflow in the star formation region GGD12-15
【日時】6月25日(水) 10:30-12:00
【タイトル】Identification of the exciting source of CO outflow in the star formation region GGD12-15
【発表者(敬称略)】佐藤 八重子(総研大 D1・三鷹、指導教員 田村元秀)
We present results of near-infrared imaging polarimetry of the GGD12-15 region with the IRSF 1.4 m telescope
and SIRIUS camera/SIRPOL polarimeter and mid-infrared imaging with the AKARI telescope and Infra-Red Camera (IRC).
Two infrared sources, IRS9E and IRS9M near an H2O maser source situated on both sides around a VLA source (VLA7), have been believed to be two bipolar lobes associated with a massive CO outflow.
However, our polarimetric observations have revealed that IRS9E is stellar-like and not part of reflection nebula.
Furthermore, IRS9M itself is not stellar but a bipolar nebula extending north-south. Both polarization vector maps and polarized intensity images show that the true illuminating source, IRS9Mc, is not resolved and situated near the peak of the intensity image. Our astrometry also indicates that the position of IRS9Mc does not coincide with the water maser position but rather coincides with the VLA7 position. We suggest that the unresolved illuminating source IRS9Mc is the true exciting source of the CO outflow, corresponding to a mid-infrared source detected by AKARI with a lower spatial resolution.
Fluxes of the newly identified source at 1 to 11 μm are derived by separating contributions from nearby infrared sources; the spectral energy distribution is consistent with that of a class I/0 source.