コロキウム」カテゴリーアーカイブ

近赤外線PaαによるMBHの推定(Estimating Black Hole Masses Using Paα emission line)

【日時】10月12日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】今瀬 佳介(総研大 D1・ハワイ、指導教員 : 児玉 忠恭 & 今西 昌俊)
【タイトル】近赤外線PaαによるMBHの推定(Estimating Black Hole Masses Using Paα emission line)
Abstruct:
Active Galactic Nuclei (AGNs) are luminous objects, found in the nuclei of galaxies.
It is believed that they have suppermassive black hole and accretion disk in their central region, surrounded with broad-line region(BLR).
This picture is called “Unified model for AGN” (e.g., Antonucci 1993) Today, masses of black holes of AGNs (MBHs) are mainly estimated with broad optical and UV emission lines (Hα, Hβ, MgII), using their line width and flux.
More than half of AGNs, however, are affected with the foreground gas and dust.
For such AGNs (so-called “dusty AGNs”), it is difficult to use UV/optical lines as estimators of MBHs.
On the other hand, Paα and Paβ lines, two of the strongest lines in near-infrared(NIR) and free of blending, are detectable in “dusty AGNs” and ultra luminous IR galaxy(ULIRG).
We have observed 21 nearby PG QSOs with IRTF/SpeX in order to establish Paα lines, the strongest line in NIR, as a new estimator of MBHs for dusty AGNs.
In the colloquium, we report the present results and our future work.

The First Systematic Survey for Lyman Alpha Emitters at z=7.3

【日時】10月5日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】澁谷 隆俊(総研大 D2・三鷹、指導教員 : 家 正則 & 柏川 伸成)
【タイトル】The First Systematic Survey for Lyman Alpha Emitters at z=7.3
【アブストラクト】
We have performed deep imaging survey for Lyman alpha emitters (LAEs) at redshift 7.3 in two blank fields, the Subaru Deep Field (SDF) and the Subaru/XMM-Newton Deep Field (SXDF), using the Subaru/Suprime-Cam equipped with new red-sensitive CCDs and a new narrow-band filter NB1006 (center=10,052A, FWHM=214A).
The limiting AB magnitudes (2″, 5sgm) attained were NB1006=24.8 and 24.6 with effective integration times of 17.2 and 14.3 hours, respectively, in the SDF and the SXDF.
By comparing the NB1006 magnitudes of detected objects with the archived Suprime-Cam data taken at other in shorter wavelength bands, we identified four objects that exhibit a luminosity excess in the wavelengths covered by the NB1006 filter. Carrying out deep follow-up spectroscopy of three candidates out of them using Subaru/FOCAS and Keck/DEIMOS, we identified one of them as a real z=7.215 LAE, and another as a tentative z=7.288 LAE.
In the colloquium, I will demonstrate how to constrain the neutral fraction at z=7.3 using this LAE.

Masses of Supermassive Black Holes in ULIRG estimated by effective radius

【日時】6月29日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】大井渚(総研大 D3・ハワイ、指導教員 : 有本 信雄 & 今西 昌俊)
【タイトル】
Masses of Supermassive Black Holes in ULIRG estimated by effective radius
【アブストラクト】
活動銀河核(AGN)の中心部に存在する超巨大ブラックホール(SMBH)と毋銀河の性質(速度分散・光度・有効半径)には正の相関関係があることが観測的に分かっており、AGNと銀河が互いに影響を与えながら進化してきた(共進化)ことを示唆している。
しかしこの関係が、いつどのようにして出来たのかは未だ明らかになっていない。
超高光度赤外線銀河(ULIRG)は、 AGN の中で最も明るい (Lopt>10^12Lsun) クェーサー(QSO) と同程度のエネルギーを赤外線領域で放っている天体であり、QSO に匹敵するエネルギー源が塵に隠されて存在することを意味する。またULIRGは塵に富む銀河の合体末期に選択的に見つかっていることから、銀河が衝突合体することで銀河・SMBHの成長が共に促進され、ULIRGの段階後、QSO的AGNに進化するという理論がある。
一方で、ULIRGのエネルギー源は星生成であり、QSOとは無関係で、QSOには進化しないとする主張もあり、その状況は混沌としている。
我々はこの問題を解決すべく、ULIRGの中心に存在するだろうSMBHの質量(MBH)を見積もる。
ULIRGがQSOに進化するならば、ULIRGのMBHはQSOのものに匹敵するはずである。
ULIRGは中心に塵を大量に持つため、従来用いられている可視光を用いてガスの輝線幅からMBHを測ることが不可能であった。
そこで、我々はMBHと相関がある銀河の有効半径を塵の影響の少ない赤外線の撮像データからMBHを見積もる。
本講演では、南アフリカにあるのIRSF1.4-m望遠鏡で観測した50天体のULIRGに対して見積もったMBHとそこから示唆されるQSOとの進化関係について議論する。

Cosmic history of Core-collapse Supernovae and Supernova Relic Neutrinos(重力崩壊型超新星爆発にみる宇宙史と残存超新星起源ニュートリノ)

【日時】6月22日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】鈴木 重太朗(総研大 D3・三鷹、指導教員 : 梶野 敏貴)
【タイトル】Cosmic history of Core-collapse Supernovae and Supernova Relic Neutrinos(重力崩壊型超新星爆発にみる宇宙史と残存超新星起源ニュートリノ)
 本研究は、超新星背景ニュートリノを観測手段として用い、その検出率を予測する際の理論的な仮定の妥当性を定量的に評価することにより、ニュートリノ振動パラメータ及び超新星爆発時のニュートリノ温度を従来より厳密に制限することを目的とする。また、大質量星形成の時間進化をより詳細に知ることを併せて目的とする。
 重力崩壊型超新星爆発の際には、多量のニュートリノが発生して重力的束縛エネルギーのほとんどを運び去ると考えられているが、ニュートリノは他の物質との反応性が乏しいため、過去の超新星爆発の際に発生したニュートリノは背景ニュートリノ(以下、SRNと略記)として現在も宇宙空間を飛び交っていると考えられている。但し、そのエネルギースペクトルを精度よく予測するためにはいくつかの不定性が障害となる。
これらの不定性のうちの主なものは超新星爆発時のニュートリノ温度の不定性であり、また、これまであまり着目されていなかったfailedSN(爆発後にブラックホールを残す超新星爆発)やガンマ線バースト(GRB)及びO-Ne-Mg核超新星爆発からの寄与についても検討の余地がある。
 本研究では、SRNエネルギースペクトルを決定する各要素がどのような不定性をどの程度有するか、及びそれらを減ずる方法を紹介し、これを踏まえて現在計画中の106 t級水チェレンコフ型検出装置において得られるエネルギースペクトルを予測する。そして、さらにこれを踏まえて、ニュートリノ振動パラメータ及び超新星ニュートリノ温度へ制限を加えうる可能性を議論する。

活動銀河ジェットM87における超高エネルギーγ線フレア領域のVLBI観測

【日時】6月8日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】秦 和弘(総研大 D3・三鷹、指導教員 : 川口 則幸)
【タイトル】活動銀河ジェットM87における超高エネルギーγ線フレア領域のVLBI観測
アブストラクト
活動銀河中心核(AGN)に付随する相対論的ジェットではしばしば電波~X線に渡り強い非熱的放射が観測される。このうち幾つかのAGNジェットではテラ電子ボルト(TeV)に至る超高エネルギー(Very-High-Energy:VHE)γ線が観測されており、相対論的ジェットが卓越した粒子加速の現場となっていることを示唆している。
しかしながらジェットのどこで、如何にしてこれらの現象がもたらされるのか、その詳細は未だ明らかでなく、宇宙物理学における重要課題の1つとして残されている。
この問題に切り込む有力なアプローチは、VHE観測と同期して高分解能VLBI観測を行うことである。
おとめ座銀河団の中心部に位置する電波銀河M87は最近傍のVHEγ線源である。
その近さゆえジェットが他のγ線AGNに比べ圧倒的な空間スケールで分解されており、γ線放射の起源を紐解く上で鍵となる天体である。
これまで2005年、2008年に大規模なVHEフレアが観測されており、フレアに同期して行われたVLBI観測はγ線放射領域の特定および物理状態に極めて重要な制限を与えている。
2010年4月、M87で再び大規模なVHEγ線フレアが報告された。
我々はこのフレアとほぼ完全に同期してVLBAによる高分解能観測に成功した。
そこで今回は2010年VHEフレア時のVLBIスケールの様子について報告し、本観測から示唆されるフレアの発生場所、物理状態等について議論する。