総合研究大学院大学天文科学コース

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小森 健太郎(こもり けんたろう、KOMORI, Kentaro)

職名

  • 准教授

研究内容の紹介

  •  重力波天文学は、宇宙の極限環境を直接探ることができる新しい観測手段です。ブラックホールや中性子星の合体、さらには晴れ上がり以前の初期宇宙に起源を持つ信号など、従来の観測ではアクセスできなかった現象に迫ることができます。
     私の研究は、宇宙の彼方から届く微弱な重力波信号を精密に捉える計測技術そのものを革新することにあります。重力波望遠鏡の感度向上は、量子光学技術を用いた超精密測定、多段振り子を用いた防振技術とその制御、さらに振り子を効果的に冷却するための低温技術といった、最先端の技術の融合によって支えられています。私は特に、極限的な精密測定を可能にする量子光学技術の開発に取り組んでいます。さらに、次世代の重力波望遠鏡に向けた新しいアイデアを、テーブルトップスケールの実験で実証する研究も進めています。
     興味深いのは、重力波望遠鏡が単なる「観測装置」にとどまらない点です。装置の性能限界を突き詰める過程では、巨視的なスケールにおける量子力学(鏡の運動に現れる量子ゆらぎ)や、揺動散逸定理に基づく熱ゆらぎといった、基礎物理そのものが直接的な研究対象となります。すなわち、望遠鏡を開発すること自体が、新しい物理の検証につながっています。
     重力波検出器は巨大な装置ですが、その感度を決めているのはミクロな世界で起きている現象です。基礎物理と最先端の実験技術を横断しながら、「宇宙を聴く能力そのものを高める」と同時に、「自然法則の限界に迫る」ことが、この研究の大きな魅力です。

略歴

  • 2019年: 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了
  • 2019年: 日本学術振興会 海外特別研究員 (LIGO、マサチューセッツ工科大学)
  • 2020年: JAXA宇宙航空プロジェクト研究員 (宇宙科学研究所)
  • 2022年: 東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センター 助教
  • 2026年: 国立天文台重力波プロジェクト推進室 准教授

専門分野

  • 重力波物理学、量子オプトメカニクス

研究のキーワード

  • 重力波検出器、量子光学、オプトメカニクス

現在の研究課題

    1. 重力波望遠鏡KAGRAのコミッショニング
       日本の重力波望遠鏡KAGRAの性能を最大限に引き出すためのコミッショニング(装置の調整・高度化)に取り組んでいます。KAGRAの感度はこれまで着実に向上しており、2028年に予定されている次期観測運転においてKAGRAでの重力波初観測を目指しています。その中でも、Resonant Sideband Extraction(RSE)と呼ばれる最先端の干渉計構成の実現は重要な課題の一つです。これは重力波によって発生するレーザー干渉計の信号量を大きく高める技術であり、現在まさにその実現に向けた研究開発が進められています。実際の大型装置を舞台に、その性能を引き出していくスケールの大きな研究です。
    2. 量子雑音低減技術の開発
       重力波望遠鏡の感度をさらに向上させるためには、測定の本質的な限界である量子雑音を克服する必要があります。そのために、TAMA300と呼ばれる全長300 mの大規模干渉計実験施設を用い、新しい量子光学技術の実証に取り組んでいます。このような長大な光学系を使って量子雑音低減技術を検証できる環境は世界的にも非常に貴重です。次世代の重力波望遠鏡で鍵となる技術を、実際の観測スケールに近い条件で確立することを目指しています。
    3. テーブルトップスケールの実験
       大型装置とは対照的に、実験室スケールでの基礎研究にも力を入れています。例えば、重力波望遠鏡の感度を制限している主要な要因の一つであるコーティング熱雑音を精密に測定し、より優れた材料設計につなげる研究を行っています。また、ミリグラムスケールの振動子をレーザー冷却によって量子力学的な基底状態に近づける実験や、超軽量ダークマターの探索など、精密測定技術を応用した新しい物理の探究にも挑戦しています。比較的小規模な装置でありながら、重力波観測や基礎物理に直結する成果を生み出すことができるのが特徴です。

    4.  このように、大型観測装置の開発から基盤技術の革新、さらには新しい物理の探索に至るまで、異なるスケールの研究を有機的に結びつけながら、重力波天文学の可能性を広げています。

所属学会

  • 日本物理学会

主要業績 (論文、著書)

  • K. Komori, et al., “Attonewton-meter torque sensing with a macroscopic optomechanical torsion pendulum”, Phys. Rev. A 101, 011802(R) (2020).
  • K. Komori, et al., “Demonstration of an amplitude filter cavity at gravitational-wave frequencies”, Phys. Rev. D 102, 102003 (2020).
  • K. Komori, et al., “Improving force sensitivity by amplitude measurements of light reflected from a detuned optomechanical cavity”, Phys. Rev. A 104, L031501 (2021).

最近の研究業績

論文等
  • Y. Michimura, …, K. Komori, et al., “Initial acquisition requirements for optical cavities in the space gravitational wave antennae DECIGO and B-DECIGO”, Class. Quantum Grav. 42, 225027 (2025).
  • H. Takidera, …, K. Komori, et al., “Adjusting optical cavity birefringence with wavelength tunable laser for axion searches”, Phys. Rev. D 112, 063048 (2025).
  • K. Suzuki, …, K. Komori, et al., “Observation of an optical spring in a robustly controlled signal-recycled Michelson interferometer”, Opt. Express 33, 40026 (2025).

台外活動(大学教育、社会活動、アウトリーチ等)

大学教育
  • 東京大学理学部物理学科3年 物理学実験II「ブラウン運動」主導
  • 東京大学理学部物理学科4年 物理学特別実験 主導
アウトリーチ
  • 沖縄県竹富町立黒島小中学校講演会「ブラックホールがブラックホールを飲み込んだら?」2024年11月25日
  • 理学部オープンキャンパス2023小柴ホールライブ講演会「重力の波を聴きとる」2023年8月2日
  • 第35回東京大学理学部公開講演会「宇宙にこだまする残響を聴く〜重力波観測の現在と未来〜」2023年3月10日

代表者を務めた研究・プロジェクト

  • 科研費・若手研究 (2022 - 2026)「宇宙空間でのCSL模型検証に向けた小型機械光学結合系の構築」
  • 科研費・学術変革領域研究A (2024-2026)「多波長重力波観測に向けた鏡のレーザー光反射膜熱雑音の直接測定」
  • 科研費・基盤B (2025 - 2028)「異基材の光共振器を用いた超軽量B-Lダークマター探査」
  • NEXUS日本-シンガポール共同公募「量子」(2026 - 2029)「先進的な防振技術による巨視的量子系の実現」Co-I
  • その他、科研費基盤S・基盤A・挑戦的萌芽などで主たる共同研究者

関連ホームページ

連絡先

  • gw-contact_at_nao.ac.jp
    (_at_を@に変更してください)

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