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低金属量ターンオフ星のリチウム組成

【日時】9月8日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】伊藤 紘子(総研大 D1・三鷹、指導教員 : 青木 和光)
【タイトル】低金属量ターンオフ星のリチウム組成
低金属量星のうち進化の進んでいないターンオフ星のリチウム組成は金属量によらずほぼ一定値を取ることが知られている(Spite plateau)。
この値はビッグバン元素合成によるリチウム合成量に相当すると考えられていたが、WMAPから求められたバリオン密度を標準ビッグバン元素合成モデルに適用するとSpite plateau の数倍ものリチウム合成量が予測され、観測と理論の不一致が問題となっている。
また、近年の観測によって[Fe/H]<-3ではリチウム組成が従来のplateau値より低くなる傾向が示され、ビッグバン元素合成や低金属量星内部でのリチウム破壊を理解する手がかりとして注目されている。 このような超低金属量下でのリチウム組成のふるまいを解明するために、これまでほとんど測定例がなかった[Fe/H]<-3.5におけるサンプルの拡大が求められている。 そこで、我々はSDSS/SEGUEによって新たに発見された低金属量ターンオフ星をすばる望遠鏡HDSで高分散分光観測し、リチウム組成を調べている。 これまでに観測・解析した9天体はほぼすべて[Fe/H]<-3.0であり、さらに約半数は[Fe/H]<-3.5であった。 今回の発表では現時点での進捗状況を報告し、今後の展望を述べる。