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AKARI赤外線観測による星形成領域のYSO分類

【日時】7月7日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】佐藤 八重子(総研大 D2・三鷹、指導教員 : 田村 元秀)
【タイトル】AKARI赤外線観測による星形成領域のYSO分類
2006年に打ち上げられたAKARI衛星では、多数の星形成領域の観測を行なってきた。我々は、赤外線カメラIRCを用いて、約200視野の星形成領域の観測を行ない、その解析を進めている。これらの中から、星形成過程における個々の星周構造を研究していくために、星のクラスターがあり、重い星を含まない領域について、統計的な議論を行なって行く予定である。O型星のような重い星を含まない中質量星形成領域では、原始星の進化は比較的遅いため、また大質量星による影響がないため、星周構造が残りやすいと考えられる。
今回は、これまで解析を進めてきた星形勢領域GGD12-15とSerpens領域に対して結果をまとめたので、報告する。GGD12-15領域は約1kpcにあるクラスターを伴う星形成領域で、HⅡ領域や水メーザー、COアウトフロー、多数の近赤外線源や電波源といった活発な星形成活動を示す天体が多く確認されている。Serpensは260pcという近距離にある低質量星形成領域として知られる有名な星形成サイトで、class0/I天体を含むような若いクラスターが存在しており、多くの研究がなされてきた。
約10分角の広視野を持つAKARI/IRCにより、どちらの領域においても、近赤外線(3,4μm)では350天体以上、中間赤外線(7,11μm)でも100天体以上を検出した。3,4,7μmのデータによる2色図や、GGD12-15領域とSerpens領域を比較したところ、中心のクラスター天体と視野外縁に位置する天体のばらつきの特徴が良く似ていた。中心のクラスター天体は赤化や赤外超過を大きく受けているのに対して、外縁部の天体は赤化をほとんど受けていなかった。またGGD12-15領域では、南アフリカIRSF/SIRPOLによる近赤外線偏光観測から、JHKsで約300天体が検出されている(中間レポート報告内容)。JHKsによる2色図では、赤外超過を持つ天体は約15%程度であったが、これは中間赤外線を含めた2色図から得られる割合より小さい。さらに3,4,7μmの2色図による赤外超過を持つ天体のうち、H,Ksでも検出された天体についてSEDを作成したところ、ほぼ全てがclassⅠ天体であり、これらは中心クラスター付近に位置していることも確認された。
今回は、GGD12-15領域の2色図などを用いて進化段階を分類し、それらの天体の空間分布について解析を行なった結果を踏まえて、近赤外線(IRSF)と中間赤外線(AKARI)によるYSOの分類法を提案していく。また、比較対象として、Serpens領域のIRSF/SIRPOLの結果(Sugitani et al. 2010)も含めて議論を行なっていく。