月別アーカイブ: 2010年4月

Weak lensing+photo-z catalog による銀河団探査

【日時】4月28日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】内海 洋輔(総研大 D2・三鷹、指導教員 : 宮崎 聡)
【タイトル】Weak lensing+photo-z catalog による銀河団探査
銀河団は宇宙最大の重力束縛系である.
質量のほとんどがダークマターでしめられている.
銀河団の進化は自己重力による収縮過程と宇宙膨張による成長の阻害の二つの過程が支配しているので,銀河団の個数や質量関数の進化は宇宙論パラメータに強く依存している.
この点に着目して宇宙論パラメータを調べる研究は可視光観測,X線観測によってすでに多くなされてきた(e.g. Abazajian et al., 2005; Vikhlinin et al., 2009).
しかしこれらの手法では質量となんらかの観測量の間の関係を仮定する必要があるため質量関数などを構築する上で,系統的なバイアスを生みやすい.
そこで質量を直接反映する弱重力レンズ効果を使った研究が重要になる.
一方弱重力レンズ効果を使った銀河団探査では銀河団の存在を確認することはできるが,その赤方偏移を測ることができないために質量を決めることができない.
しかし将来的に計画されている1000平方度を超える HSC wide survey では分光フォローアップが現実的ではなくなるので photo-z を使うことを検討している.
今回は予備的な研究として SDSS photometric redshift catalog と比べることで銀河団の赤方偏移が決められるかを検討した.
本講演ではその経過報告と今後の展望について述べる.

近傍ULIRGのブラックホール質量

【日時】4月14日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】大井渚(総研大 D2・三鷹、指導教員 : 今西昌俊)
【タイトル】近傍ULIRGのブラックホール質量
超高光度赤外線銀河(ULIRG)はクエーサーに匹敵するほどのエネルギー(10^12Lsun)を赤外線で放射していて、銀河の衝突・合体の末期に選択的に発見されている。クエーサーの中心にあるブラックホールは普通の銀河中心のブラックホールよりも一桁重く(MBH>10^8Msun)、この質量のブラックホールは、ガスに富む普通の銀河(MBH~10^7Msun)の合体で形成できるというシミュレーション結果がある。
これらのことから、ULIRGはクエーサーに進化するという可能性が示唆されているが両者は進化関係にないと主張する結果も出ており、状況は混沌としている。我々はULIRGのブラックホール質量をクエーサのと比較することで、この問題に観測的な制限をつけることを目指している。ブラックホール質量と相関があり、進化段階に鈍感な銀河の有効半径を、減光の影響が小さい近赤外線Kバンドから求め、ガスに隠されているULIRGのブラックホール質量を見積もる。本発表では南アフリカにあるIRSF望遠鏡を用いた深撮像データの解析結果を報告する。解析が終わった天体についてブラックホールを見積もったところ、半分以上の天体でクエーサーに匹敵する質量のブラックホールをもっている可能性があることが分かった。
またIRSF望遠鏡は近赤外線J, H, Kバンドを同時に観測できるため、バンドごとの有効半径の違いについても議論する。