年別アーカイブ: 2010年

DIB POPプロジェクト

【日時】1月6日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】DIB POPプロジェクト
【発表者(敬称略)】今瀬 佳介(総研大 M1・三鷹、指導教員 今西昌俊 )
DIBs(Diffuse Interstellar bands)は、可視光から近赤外の領域(4300\AA~1.3um)において観測される、幅の広がった吸収線の総称である。80年ほど前のMerrilによる最初の発見以来、現在確認されているDIBの総数は300以上にも上る。
DIBの大きな問題として、ほとんどのDIBでその吸収物質(DIBキャリア)の正体が解明されていない、ということがあげられる。現在ではその候補としてPAH、フラーレンといった有機化合物のような、巨大で複雑な構造をもった化合物が考えられている。
またどこにDIBが存在しているのか、ということも問題である。これまでにDIBの存在は、マゼラン星雲や近傍銀河、スターバースト銀河などのさまざまな方向の星間物質において確認されている。このように、DIBキャリアは宇宙に広く存在していると考えられているが、その物理的性質等もいまだ解明されていない。
現在近赤外線の領域において、9577/AAと9632/AAの2つの波長に存在するDIBは、そのキャリアの候補が挙がっている数少ないDIBである。この2つのDIBのキャリアはC60であると考えられているが、同時にC60がキャリアであれば存在が予測される波長域にDIBが検出されていない、という問題点もある。
しかし、9017,9210,9258/AAにおいて2009年にMisawa et al.がC60がキャリア候補であると考えられるDIBを発見しており、9577/AAと9632/AAの2つのDIBのキャリアがC60であることは確実であると考えられる。
そこで上述の2つのDIBに注目し、宇宙における生命の起源を探るべく理研の三澤氏、Poshak氏と総研大の院生によって2009年の夏にDIB POPプロジェクトを開始した。
このプロジェクトの狙いは、生命関連物質である有機化合物を宇宙空間において検出することである。
しかし、星間ガスの組成をそのまま地球上の生命の起源と直結させるのには飛躍があるため、太陽系の材料となった物質がガスとして存在する、惑星系円盤のような地球の化学組成が反映されていると考えられる領域において研究を行う。また同時に現在の少ないDIBサンプルに大量のDIBサンプルを提供するということも本プロジェクトの意義としてあげられる。
本講演では、DIBの概要およびDIB POPプロジェクトの進捗状況について報告する。

赤方偏移z~7クェーサー探査

【日時】1月6日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】赤方偏移z~7クェーサー探査
【発表者(敬称略)】石崎 剛史(総研大 M1・三鷹、指導教員 柏川伸成 )
宇宙はビッグバンによる誕生の後、宇宙空間中の水素原子核と電子の再結合が起こり,中性化した。
しかし, 現在 の宇宙空間はほぼ完全に電離されていることが知られている。
つまり、一度中性化した宇宙を再び電離する事象が 起こったことになる。
これを「宇宙の再電離」と呼び, 宇宙誕生後 10 億年以前に起こったことが分かっているが、具体的な時期やどのような天体が主に寄与したのかはよく分かっていない。
クェーサーは再電離に影響したと考えられている天体の一つであり、宇宙再電離領域に存在するクェーサーの個数密度から再電離への寄与度合いを見積もることができる。赤方偏移 z > 6.5 のクェーサーの発見は極めて重要であり、再電離期のクェーサー光度 関数に制限をかけることができる。
我々はすばる望遠鏡主焦点カメラ (Suprime-Cam) を用いて、UKIDSS DXS 領域に対して2009 年 6 月に 3 晩のサーベイを行った。
Suprime-Cam の CCD はアップグレードされ、波長 1 ミクロン付近の感 度が従来に比べ約 2 倍なり、観測効率が上がった。
観測に用いたフィルターは Zr、Zb (中心波長はそれぞれ9841A、8842A)の2バンドである。
Zr バン ドの測光データは、クエーサーと M/L/T 型晩期型星との区別に極めて有効である。
この観測データと UKIDSS の J バンドで撮像された画像データを用いて、z=7 付近のクェーサー候補を探す。
本発表では、z~7 の クェーサー候補の観測と解析状況を報告する。