【日時】1月25日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】松澤 歩(総研大 M1・三鷹、指導教員 : 井口 聖)
【タイトル】Evaluation of servo error in ALMA 7m antenna
【アブストラクト】
電波望遠鏡の観測において大きな問題となるのが、アンテナに指示した方向と実際にアンテナが向いている方向の誤差、すなわちpointing errorである。pointing errorにより、天体から受信するフラックスが減少してえられた画像の信頼度が下がる。電波観測において許容されるpointing errorは、一般にアンテナの分解能の1/10以下とされている。ALMAではアンテナに搭載された光学望遠鏡を用いてpointing errorを測定している。Pointing errorにはoffset pointing errorとabsolute pointing errorがあり、offset pointing errorの測定結果にはアンテナ自身のpointing error、星の位置揺らぎ、servo errorのそれぞれに起因する成分が含まれている。私の研究テーマは、このoffset pointing errorからアンテナ自身による成分の抽出を目的としている。そのために昨年11月から12月にかけてALMA7mアンテナのポインティング観測を行い、様々な速度におけるservo errorを測定した。その結果、速い速度においてerrorが高くなる傾向が見られた。想定されるservo errorは0.07[arcsec]を下回るとされており、速度0.1[deg/s]以下ではservo errorはその要件を満たしていることが分かった。
「コロキウム」カテゴリーアーカイブ
Narrow Band Photometry to Detect Young Brown Dwarf in NGC1333
【日時】1月18日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】Oh Daehyeon(総研大 M1・三鷹、指導教員 : 田村元秀)
【タイトル】Narrow Band Photometry to Detect Young Brown Dwarf in NGC1333
恒星と惑星の中間的な質量を持つ褐色矮星はLate-M型星として分類されてきたが、近年の様々な観測的研究により、もっと低温と思われるL・T型矮星が次々と発見され、さらにはY型矮星の候補も上がってきている。LおよびT型矮星はその質量が巨大惑星に近いと思われるため、様々な低質量星候補を対象に分光観測によるM・L・T型矮星の判断が行われてきている。そしてM・L・T型矮星を見分けるより簡単な方法として二つのNarrow Band撮像が最近扱われている。
今回の発表では、Narrow Band撮像を使って褐色矮星の観測を行った先行研究の成果と、同じ種類の方法で11月に行われた観測について紹介する。
Gravitational Wave Data analysis and Experiments
【日時】1月11日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】(総研大 橋詰 克也 M1・三鷹、指導教員 : 藤本 眞克
【タイトル】
Gravitational Wave Data analysis and Experiments
【アブストラクト】
現在、重力波の初検出を目指して世界で地上大型重力波望遠鏡の開発が進められている。
重力波は微弱な信号であり、次世代の重力波望遠鏡が恒等的に持つであろう雑音レベルと同程度かそれ以下の成分であると考えられる。従って望遠鏡の出力の雑音から重力波信号の成分を取り出す処理をしなければならない。雑音の1つに鏡を吊るす懸架系のワイヤーの共振周波数が励起されたようなものなど、狭帯域で強いパワーを持つもの(ライン)があり、その帯域のバースト性重力波の観測を困難にする。LCGT世代の地上大型重力波望遠鏡でもラインは高感度な帯域に存在し感度の悪化を招くため、ラインの除去は重要となる。
我々はそのライン除去法に関する開発を進めており、本講演では手法の概要、解析のシミュレーション結果を報告する。
また、地上大型重力波望遠鏡の他に重力波観測を宇宙空間で行う計画も進められており、現在日本のスペース重力波アンテナ:DECIGOの開発が行われている。宇宙空間での重力波観測は地面振動の影響無いことや基線長を稼ぐことができるため、低周波の重力波観測に適している。そのため地上大型重力波望遠鏡とは異なるサイエンスが期待できる。
DECIGOの技術検証を目的とした前哨衛星:DPF(DECIGO
Pathfinder)に搭載される姿勢制御用スラスターには、太陽風などの外乱の中で高精度なドラッグ・フリー技術を達成するためにマイクロスラスターが用いられようとしている。我々は低インテンシティCWレーザー推進に注目し、その技術開発も行っている。
本講演では低インテンシティCWレーザー推進によるスラスター開発の現状と今後の課題も合わせて報告する。
Cosmological Evolution of SMBH mass-Bulge mass Relation investigated by SDSS QSOs at z~3
【日時】12月14日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】濟藤 祐理子(総研大 M1・三鷹、指導教員 : 林 左絵子 & 今西 昌俊)
【タイトル】Cosmological Evolution of SMBH mass-Bulge mass Relation investigated by SDSS QSOs at z~3
近傍宇宙では、銀河中心の超巨大ブラックホール質量M_BHとその母銀河のバルジ質量M_bulge との間に強い相関があり、両者が共進化してきたことを示唆する観測結果が多数得られている(e.g. Marconi & Hunt 2003)。一方、複数の理論モデルでは、M_BH/M_bulge比の異なる赤方偏移進化が予言されており、特に高赤方偏移ほどモデル間の差は大きくなっている。これらのモデルに対し観測的に制限を与える事は、ブラックホールと銀河の進化において鍵となるメカニズムを特定する上で重要であり、そのためには赤方偏移3 以上の天体について観測を行う必要がある。しかしながらこれまでのブラックホール・バルジ関係の観測的研究は、主に赤方偏移が2 以下の観測しか行われておらず、赤方偏移進化の理論モデルについて強い制限は与えられていない。
そこで我々は、SDSSクエーサーサンプルの中から赤方偏移3.11-3.50の天体を選び出し、これらに対して近赤外線分光観測によるブラックホール質量の導出とAO撮像観測によるバルジ質量の導出を行い、提唱されている理論モデルに対して観測的に制限を与えたいと考えている。これまでに、WHT/LIRIS、IRTF/SpeX、UKIRT/UISTを用いて分光観測を行い、我々のサンプルのうち明るい天体についてはほぼ分光観測が終了している。本講演では、具体的な研究手法について紹介すると共に、現在の研究の進行状況について報告する。
A High Redshift Protocluster Proved by Wide-field Imaging
【日時】11月30日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 中央棟(北)1階 講義室
【発表者(敬称略)】利川 潤(総研大 M2・三鷹、指導教員 : 柏川 伸成
【タイトル】
A High Redshift Protocluster Proved by Wide-field Imaging
【アブストラクト】
銀河団は宇宙で最も重い、重力的に束縛された天体である。このような大質量の天体はダークマターの密度分布の特に高密度な領域において形成され、フィラメント構造の交差点のような場所に存在すると考えられる(Springel et al. 2005)。
また銀河団のように高密度環境に存在する銀河は”red sequence”(Visvanathan 1977)や形態密度関係(Dressler 1980)などのようにフィールド銀河とは異なる性質を持っていることが分かっている。
銀河団がどのように形成されたかを調べることにより「宇宙の構造形成がどのように進むのか」、「高密度環境において銀河はどのように進化するのか」という問題にアプローチすることができる。
銀河団形成を解明するためには様々な段階を調べることが必要であるが、銀河団が完成する前の段階の”原始銀河団”を研究することも重要である。
我々は特に形成の最初の段階と予測される遠方の原始銀河団を研究する。
まずSubaru Deep Fieldにおいて赤方偏移6の原始銀河団の発見を目指し研究を行ってきた。
Subaru/SprimeCam z’-bandで30時間積分の撮像データを用いることで258天体ものz~6 Lyman Break Galaxyを発見することができ、銀河の空間分布を詳細に調べることができた。
その結果、有意に高密度な領域が存在し、その高密度領域に対して分光追観測を行うことで8天体が奥行き方向についても集中していることが確かめられた。これをもって我々はz~6原始銀河団を発見したと考えている。
本発表ではこの発見について報告する。
この非常に遠方の原始銀河団の発見から、最初に述べたような大規模構造や銀河進化に関する問題にどのように取り組んでいくか、現在行なっている解析も踏まえて今後の展望についても紹介したい。