VLBI観測で探る銀河系棒状構造

【日時】6月17日(水) 10:30~12:00
【場所】国立天文台・三鷹 北研1階講義室
【タイトル】VLBI観測で探る銀河系棒状構造
【発表者(敬称略)】松本尚子(総研大 D4・三鷹、指導教員 本間希樹)
 銀河系の棒状構造について過去の様々な観測や理論モデルからその存在が示唆されている。
棒状構造の長軸の向きは太陽から銀河中心方向に対して、20 °程度の傾き(ex. Binney et al. 1997; Dwek 1995) を持っているといわれ、CO分子ガスのPV図とモデルを照らし合わせた研究(ex. Bissanz et al. 2003)などからはNuclear ringや3kpc armなどの構造が示されており、大体の傾向は捉えられている。
しかし、絶対位置や3次元運動ではまだ捉えられてはおらず、不確定性も大きい。特に、ガスの運動については、3次元的にガスの固有運動を直接議論できるような観測はなされていない。
そこで、この銀河系棒状構造を対象に、VERA・JVNを用いた超長基線電波干渉計による高精度アストロメトリ観測を計画した。
この観測により、棒状構造を構成していると考えられるメーザー源の絶対位置・絶対3次元運動を捉えることを目標とする。
メーザー源の中でも、6.7GHz帯メタノールメーザー源は大質量星形成に付随し、系内のガスの運動をとらえることができる魅力的なツールであり、3kpc arm付近の天体を見るのに、天体数・fluxなどの観測条件を十分に備えている。
5月に新6.7GHz受信機がVERA全局配備され、7月からは6.7GHz帯VLBI観測が本格始動可能となった。
 銀河系の棒状構造を運動学的にとらえる本研究計画について、今回はSakamoto et al. 1999を用いたガスの非円運動成分の見積もりの結果をはじめ、新受信機の紹介、現在進行中のメタノールメーザー源の観測状況およびフリンジチェック観測の結果などについて報告し、絶対三次元固有運動計測の実現性について述べる。