太陽の「音色」の分析法―日震学のアプローチ―

【日時】6月4日(水) 10:30-12:00
【タイトル】太陽の「音色」の分析法―日震学のアプローチ―
【発表者(敬称略)】長島 薫(総研大D2・三鷹、指導教員 関井 隆)
 日震学helioseismology とは、太陽表面の振動の観測に基づいて、太陽の内部構造を探る研究分野である。
 太陽表面ではいわゆる「5分振動」と呼ばれる振動が観測される。
この「5分振動」の主成分は、太陽内部のプラズマが乱流的対流により音波を放射し励起する、多数の固有振動である。太陽の固有振動数は太陽の内部構造で決まる、太陽独自の「音色」である。この音色をうまく聞きわける、すなわち、固有振動数スペクトルを調べることで逆に、太陽内部の音速・密度構造や自転角速度分布を求めることができる。
この手法(インバージョン)により、太陽の内部構造モデルは非常に精密なものになってきた。
 また近年では、黒点など太陽面上の特定の領域のローカルな表面下構造を探るのに適した局所的日震学local helioseismology も進展が著しい。
 これは、表面上の特定の二点間を波がどう伝わるか、例えば波の伝播距離と伝播時間の関係をもとに、その波の通った領域の物理的状態を探る方法であり、地震学で従来から使われてきた手法に対応する。現在活躍中の太陽観測衛星「ひので」や今年度中の打ち上げが予定されているSolar Dynamics Observatory といった、最新の観測衛星で得られる高分解能観測データを活かし て、今後発展が期待される。
 今回のコロキウムでは、このような日震学の基本的な考え方を紹介するレビューを行う。内部構造を求めるプロセスの解説とともに、実際のデータによる解析結果、また自身の研究の現状などについて述べたい。