W31A領域に付随する水蒸気メーザーによる3次元的速度構造

【日時】5月21日(水) 10:30-12:00
【タイトル】W31A領域に付随する水蒸気メーザーによる3次元的速度構造
【発表者(敬称略)】山下一芳(総研大D3 ・三鷹、指導教員 柴田克典)
W31A領域は一酸化炭素や赤外線の観測などから,数千太陽質量相当のガスがあると見積もられている
大質量の星形成領域である。この領域は電波の連続波観測からUltra-Compact HII Regionであることも知られており,また,NH3・H66α・CS など多くの分子輝線が検出されている。
それらの分子輝線のマップから,中心に落ち込みながら回転するガス雲の系であることも分かっており,NH3の分子輝線から,この降着流の回転軸は北東-南西方向で,軸は天球面に対し視線方向に4度傾いており,我々はほぼ円盤のへりを見ているということが観測から見積もられている。(Sollins et. al. 2005)
この天体において,22GHz帯に存在する水蒸気メーザーは1991 年にVLA 干渉計でマッピング観測されている。(Hofner et.al.1996)
この時の観測結果のマップからは,水蒸気メーザーのスポットは直線状に降着円盤の北西側に,軸に垂直な方向に付随していることが確かめられていた。また,水蒸気メーザーの視線速度のドリフトも23年にわたる単一鏡観測で確認されており(Lekht et. al. 2006),これらが降着流にのっていると示されていた。
しかしながら,2005 年10 月から2006 年3 月にかけてVERAの観測から,これらの水メーザーは円盤に付随しているものではなく,いくつかの星の系が起源であることがその速度場から推測できた。
今回はこの観測で得られた水蒸気メーザーの付随する雲の速度場と個々の水蒸気メーザーに対する考察をし,また今後の展望についても発表する。